1月末に高知市内で「心機能と腎臓の関係」という題目で講演会の講師を務めさせていただきました。

 

医療には色々な専門用語があり、「心腎連関」という言葉もその一つです。「心腎連関」とは、心臓の働きが悪くなれば、腎臓への血流が減り、その結果、腎機能が悪くなることであり、

そして、腎機能を守ろうと、心臓の働きを良くしようとする様々な因子の働きで、心臓の内腔(心臓の中)の圧力が高まる ⇒ 心臓に負担がかかり、ますます心機能が悪くなる ⇒ より腎機能も悪くなるという「悪性のサイクル」のことです。

 

現在(2017年2月時点)では、腎臓の機能を維持または、改善する可能性のある薬剤は、ARB(エー・アール・ビーと読みます)とACE(エースと読みます)阻害薬の2種類だけ、となっています。

どちらも働きは同じで、血圧を下げる薬の一種なのですが、腎臓に対しては腎臓の中の「糸球体」という、部分の圧を下げることによって腎臓の機能を守ります。

もちろん、減塩食、糖尿病の治療、血圧そのものを下げること、など腎機能を守るための大事なことはたくさんありますが、単独の「くすり」では上記の2種類のみであることを知っておいて損はないと思います。

 

ただ、血圧が高いからといって、この手の薬を一度に多い量を内服することは、危険な場合があります。理由は、腎臓の中の圧力が低下しすぎてしまい、尿がこせなくなり、結果として尿が出なくなってしまい、排出すべき毒素も排出できなくなる可能性があるからです。

よって、問題がなければ通常量の内服で全く問題ないのですが、もともと心機能が悪く心不全を起こしていたり、腎機能が悪い方には、少量、時には「超」少量から内服していただき、徐々に増やしていく、という内服の仕方もあります。

この薬には、「過ぎたるは及ばざるが如し」という気持ちで処方するように心掛けています。

 

 

高血圧の薬のことでご不明な点がありましたら、何でも良いので診察の時に、お気軽にご相談ください。

患者様に充分、ご納得していただいた上で「くすり」を飲んでいただくことが重要と思っています。

 

皆さまご存知と思いますが、インフルエンザが流行しています。

医療機関での診断は、その場で判定できる迅速キットで5−8分で陽性か陰性かの判定をします(1分で判定できる方もいます)。鼻腔(鼻の穴)や喉の奥に、専用の綿棒で検査をします。 喉の奥よりも鼻腔で検査したほうが検査の精度が良い、と一般的にされていますが、時には喉の奥から判定した方がいい場合もあります。

 

インフルエンザの「診断」は、迅速キットは完璧な判定が出ないこともあり、迅速キットだけではなく、たとえ陰性と結果が出ても、症状や周囲の環境などから総合的に「インフルエンザである診断」をすることもあります。

診断ですが、「普段の風邪と違う症状だな」と思われたら、48時間以内に医療機関を受診することを重要です(ただ、発症から約7時間程度経っていないと、キットでは、インフルエンザだとしても陰性になることもあります) 48時間という時間が大事なのは、発症から48時間以上を経過してしまうと、インフルエンザウイルスの増殖を抑える特効薬が使用できないからです。

 

治療法ですが、主に3種類の薬剤があります。5日間内服をしていただく「タミフル」、吸入薬の「イナビル」(1日吸入するだけで、5日間の効果があります)、点滴薬の「ラピアクタ」(この点滴も基本的には1日点滴することで効果を発揮できます)が主な3種類で、患者様によって、最も適切と思われる薬を、お勧めするようにしています。

 

しかし何といっても一番なのは、やはり予防です。うがい・手洗い・人混みではマスクの着用、などです。予防接種には諸説ありますが、血液中の免疫を高め、たとえインフルエンザにかかったとしても重症化させないことがメインの効果です。特に高齢者の方はインフルエンザにかかり、同時に肺炎を患うこともあるので、予防接種は重要です。喉の免疫力を高める抗体を作るワクチンではないので、「かかりにくい」というよりは、「かかる可能性もある」という認識が、予防接種後も大事と考えています。

 

予防接種をされている方は、インフルエンザにかかっても、症状が軽微なことも多いため、「予防接種をしているからインフルエンザではない」と思わずに、医療機関を受診してみて下さい。

1月22日に心臓リハビリテーション学会の四国支部の評議員に、ご推挙並びに、評議員会に出席させていただき、その後、講演をしてきました。

講演をするだけでなく、医学・医療は現在もの凄いスピードで、以前は「悪い」とされていたことが、今では「良い」ことになっている、ということも含め、大変貴重な時間を過ごしました。

 

本題の、心臓リハビリテーションについてです。心臓リハビリテーションとは、適切な心臓病の治療がなされている方に対し、最も適切な運動療法を行い、また、運動療法だけでなく、患者様が不安に思っていることのケアや栄養指導なども含まれる、画期的な治療法です。私が医学生のころは、教科書に「心臓リハビリテーション」については全く触れられていませんでしたが、今後は恐らく教科書に追加しなくてはいけない治療法だと思っております。

 

あまり知られていないことですが、筋肉は内分泌臓器であり、「マイオカイン」というホルモンを分泌することが知られてきました。

筋力がある方は呼吸で吸い込んだ酸素の利用率が高いとされ、また糖尿病の治療にも効果があることは、私どもが報告しています。「マイオカイン」は人体にとって様々な良い影響をあたえるホルモンですが、運動をしないと分泌がされにくいとされています。

 

筋力を維持・増大させるには、成長ホルモン・男性ホルモン(テストステロン)・運動・アミノ酸の摂取などがありますが、年齢とともに成長ホルモンとテストステロンは減少していきます。そのため、高齢者では、運動と栄養に関して介入していく必要が示唆されています。

「心臓リハビリテーション」を行うことで、心臓病の再発率が減少し、元気で長生きできることが証明されています。今後は循環器内科では必須の治療法になると思われます。何か心臓リハビリテーションなどに関して、ご相談したいことがありましたら、遠慮なく言っていただければ、と思います。

最後に、寒暖の差が強くでた昨年から本年にかけて、体調をくずされる方が多くみられます。体の不調がでましたら、自身で「風邪」と決めつけて放置するよりも、医療機関を受診されることをお勧め致します。

 

佐田教授と 心リハ教育講演写真

 

※恩師である、徳島大学附属病院 循環器内科 教授、佐田 政隆 先生との写真と講演時の様子の写真です。

 

1月20日と21日に第一回の四国心臓リハビリテーション学会が開催され、私は教育講演をさせていただくことになっています。

 

講演の名前は「クリニックで行う外来心リハの落とし穴」です。

 

私は心臓リハビリテーション(心リハ)を急性期病院と慢性期病院である福田心臓・消化器内科の両方で責任を持って立ち上げた経験があります。急性期と慢性期の両方を立ち上げ、深く携わった経験は、2017年現在でも珍しいことだと思い、その違いについて講演させていただく予定です。

 

主な内容は、心臓病を患う患者さんは、糖尿病を患っている方が多く、その糖尿病は、前立腺がん以外の悪性腫瘍の確率を2倍近く上昇させることが証明されていることなどの紹介に始まり、心臓病を持つ方は、心臓のことが気になる傾向があり、また、検査も心臓や血管の検査に偏る傾向が高いことに注意喚起を促すといった内容です。

心臓病が安定している方に対して、「心臓リハビリテーション」という治療法は「包括的医療」と謳われていますが、これにはがん検診について触れられていません。

 

※講演では「心臓リハビリテーション」は「循環器的」包括医療と名前を変えるべきと提言したいと思っています。

 

 

心臓病が安定すれば、積極的にがん検診を受ける、という意識が医療者にも患者さんにも大事だと思っております。

医療の格言に「女性をみたら、妊娠を疑え」というものがありますが、ここに造語ですが「糖尿病をみたら、悪性疾患を念頭におくこと」と付け加える必要性があると思います。

例えば、レントゲン検査で肺がん、胃カメラで胃がん、便潜血検査や大腸カメラで大腸がん、腹部超音波検査(エコー検査)で肝臓・膵臓・胆のう等の検査、男性であれば前立腺がんを採血検査で、女性であれば乳がん・子宮・卵巣のがん検診をすることが重要です。

 

いずれにせよ、心臓病を急性期病院で治療し、慢性期をクリニックで心リハするだけであれば、その患者さんがうける検査や治療は人体のほんの一部(心臓、血管)に限られてしまいます。

 

そういったことがないように、一宮きずなクリニックと福田心臓・消化器内科では、がん検診を疎かにしない専門的循環器治療や、心臓リハビリテーションをしています。

かかりつけ医は、心臓だけ、では患者さんの不利益になると思いますので、総合医を目指し、今後も精進していきたいと思っております。

絆

 

クリニックの名前に「きずな=絆」が入っております。

 

よく患者様から、「なぜそのような名前にしたの?」とご質問をいただく事があります。

 

医師と患者間の良好な関係には、「医師にかかる十か条」という考え方のなかにも、治療を受ける側にも責任がある、と記されています。

双方のどちらかが、一方的で身勝手な言い分をしていては、「絆」など成り立たないと思っています。「絆」については、「人と人の結びつき」が言葉の定義ですが、本当の意味での「絆」について私の考えは、患者様にとって、適切な診断・治療を提供することはもちろんであり、お互いの信頼関係が出来た上で成り立つものが「本当の絆」だと思っております。

 

その上で、患者様には十分な配慮のもと、時には耳の痛いこともお話させていただかなくてはいけないことが、将来の健康を維持することに大事だとも思っております。

 

当院と患者様の間に、深い「きずな」が結ばれて、より良い診察・療養ができるように、一緒に二人三脚で病気に立ち向かっていきましょう。