インフルエンザも収束傾向になりつつあります。今年のインフルエンザは、症状が強くでない傾向があるように感じております。

 

さて、海外では、疾患が多くリスク因子が多い人以外では、インフルエンザは検査もしないし、病院にいって治療もしない、ということが常識になっています。 私個人的には、医療保険の問題もあると思いますので、「右向け右」で海外の真似をすることが、正しいとは思っておりません。

 

海外の本(洋書)では、「インフルエンザは咽頭(喉の奥)の所見では判断出来ない」とされています。日本人が書いた特集でもそのように書かれているものも多いのが事実です。

 

私自身は、「どうもインフルエンザの方は、炎症が強いため、火傷をすると皮膚に水泡ができるように、普通の風邪と違い、水泡ができるのでは?」と10年以上前から思い、診察していました。この所見は、インフルエンザの迅速検査キットでもよく当たりますし、総合的にインフルエンザの診断をするときにも役に経ちます。

 

今週になって、熱は37℃、症状は咳だけ、という方がいました。咽頭を診ると、小水泡がありましたので、話し合った結果、インフルエンザの検査をしたところ、A型インフルエンザ陽性でした。あまりにも当たるので、調べたり、海外にいる感染症専門医に相談したところ、「海外ではインフルエンザを診ないので、喉の所見に興味がないので、成書(教科書)にも書けない事情があるのではないか?」「2011年に日本人が、咽頭に水泡があると、インフルエンザの可能性が高い」という報告がある、ということで、私もその論文を拝読しました。ネーミングは俗に「インフルエンザいくら」と呼ばれているそうです。水泡のことを「いくら」と表現しているようです。

 

医師の間でも、ほとんど知られてないことですが、来年あたりからは、海外の影響もあり、有名になってくる所見かもしれませんね。

 

あと余談ですが私は、喉の奥を診る時は、「あー」と言ってもらうより、「口で息を吸って下さい」とした方が、解剖学的に診やすい事実を意識して「インフルエンザいくら」を診るようにしています。

 

医師の診断方法にも、色々あると思います。何が正しいとかはないと思いますが、生涯修業が必要と思いながら治療するように心掛けているので、漠然と治療するのは違う、と確信できる時は、医師として嬉しいものです。

 

※ このような「いくら」が数個、喉の奥に見られる状態とのことです。

先週末は雪が降ったりして、かなり冷え込みました。体調を崩された方も多くおられました。

今年は昨年と違い、多くの花粉が舞うことが予想されているのですが、その寒さの影響で、今週初めからの予定が、今週末にずれ込むことになりそうです。

花粉症で最もつらいと思われる鼻の症状は、鼻づまり(「鼻閉」と言います)ではないでしょうか?

2016年にアレルギー性鼻炎のガイドラインが変更され、鼻閉に関しての、点鼻薬(鼻に「シュッ」とするやつです)の位置付けが変更となり、「ステロイド」入りの点鼻薬が軽症例でも安全性が確認され(2−3歳からでも使用可能)、効果を発揮するようになっています。ステロイドといっても、血液中にはほとんど入っていかないので、鼻粘膜でのみ効果を発揮しますので、ステロイドの副作用はみられないとされています。

飲み薬に関しては、抗ヒスタミン剤も良いものが出てきており、効果が強く症状が強いときには倍量を飲んでも大丈夫なものや、効果も強く眠気が少ないもの(眠気が少ない、と言えるのは、薬の説明書に、パイロットが飲んではいけない、という記載がないものを指します。)や、なかには発売されて間もないので、14日間しか処方できないものもあります。

風邪の鼻汁なのか花粉症なのか迷った時は来院していただくと、私の場合は、問診が最も重要ですが、鼻腔鏡を用いて、鼻の粘膜をみるようにしています。風邪がメインなのか、確実に花粉症だけなのかを判断するようにしています。

人それぞれにあわせて、処方をいたしますので、何か「花粉症」治療について、ご希望がありましたら何でもご相談ください。

今回はいつもより、専門的なこととなりますが、医師、福田大和としての考えや一宮きずなクリニックの在り方についても書いていますので、お読みいただければ幸いです。

 

2月8日に高知市内の循環器内科の先生方を対象とした講演会があり、題目「フレイルとSGLT-2阻害薬の関係」について講演させていただきました。

 

私は言葉の定義は大事と思っており、「フレイル」とは(難しい言葉で言うと)、

『高齢者における、環境因子(身体的、精神心理的、社会的な要因)に対する晩弱性が高まった状態で、老年症候群の一種』

ということになります。

 

簡単に言うと、「将来の寝たきりになりやすさ」と言い換えられると思います。診断の基準には、5つの項目(筋力低下、歩行速度、疲労感、体重減少、身体活動)があり、3項目以上を満たす人が「フレイル」の診断となります。ここに書かれていないことで非常に重要なことは、「フレイル」は可逆性のことがあり、何かしらの介入(治療)で改善することがある、ということです。

 

例えば、筋力は4つの因子で増強することがわかっています。その4つの因子は、成長ホルモン、テストステロン、運動、アミノ酸(蛋白質)の摂取です。年齢や疾患とともに成長ホルモンやテストステロンは減少するので、介入できることとして、「栄養の改善」「適切な運動」ということになります。

ちなみに筋力に関しては、「サルコペニア」という言葉もあり、加齢や疾患により全身の筋肉量が減少すること、と定義されています。 加齢が原因のものは1次性サルコペニアとし、それ以外の原因を2次性としています。

つまり「フレイル」の診断には「サルコペニア」についても、医師は詳しくなければなりません。 サルコペニアについても重要なのは、筋力(握力)、歩行速度です。

 

私はその方の将来を考えた医療をしたい、という思いで、町医者としてできることをしたいと思っています。握力に関しては2011年に、握力と糖尿病の関係について世界初の発表をし、論文にもしています。診察室には握力計があり、時に握力を測ってもらうようにしています。

そして出来るだけ無理のない程度での運動は非常に良い、ということをお話ししています。

また、管理栄養士による栄養指導がうけていただけるようにしており、一宮きずなクリニックでは、「フレイル」に関して介入できる環境を整えています。

どのくらいの運動が良いのか、どのような運動がいいのか、疑問がありましたら、何でもご相談ください。

おこがましいことですが、「人に教える」という行為は、私自身の勉強にもなります。 今回の講演についても何か質問があっても答えられるようにと勉強していきました。そのことはきっと患者様にも還元されるはず、と思っています。

 

1月末に高知市内で「心機能と腎臓の関係」という題目で講演会の講師を務めさせていただきました。

 

医療には色々な専門用語があり、「心腎連関」という言葉もその一つです。「心腎連関」とは、心臓の働きが悪くなれば、腎臓への血流が減り、その結果、腎機能が悪くなることであり、

そして、腎機能を守ろうと、心臓の働きを良くしようとする様々な因子の働きで、心臓の内腔(心臓の中)の圧力が高まる ⇒ 心臓に負担がかかり、ますます心機能が悪くなる ⇒ より腎機能も悪くなるという「悪性のサイクル」のことです。

 

現在(2017年2月時点)では、腎臓の機能を維持または、改善する可能性のある薬剤は、ARB(エー・アール・ビーと読みます)とACE(エースと読みます)阻害薬の2種類だけ、となっています。

どちらも働きは同じで、血圧を下げる薬の一種なのですが、腎臓に対しては腎臓の中の「糸球体」という、部分の圧を下げることによって腎臓の機能を守ります。

もちろん、減塩食、糖尿病の治療、血圧そのものを下げること、など腎機能を守るための大事なことはたくさんありますが、単独の「くすり」では上記の2種類のみであることを知っておいて損はないと思います。

 

ただ、血圧が高いからといって、この手の薬を一度に多い量を内服することは、危険な場合があります。理由は、腎臓の中の圧力が低下しすぎてしまい、尿がこせなくなり、結果として尿が出なくなってしまい、排出すべき毒素も排出できなくなる可能性があるからです。

よって、問題がなければ通常量の内服で全く問題ないのですが、もともと心機能が悪く心不全を起こしていたり、腎機能が悪い方には、少量、時には「超」少量から内服していただき、徐々に増やしていく、という内服の仕方もあります。

この薬には、「過ぎたるは及ばざるが如し」という気持ちで処方するように心掛けています。

 

 

高血圧の薬のことでご不明な点がありましたら、何でも良いので診察の時に、お気軽にご相談ください。

患者様に充分、ご納得していただいた上で「くすり」を飲んでいただくことが重要と思っています。

 

皆さまご存知と思いますが、インフルエンザが流行しています。

医療機関での診断は、その場で判定できる迅速キットで5−8分で陽性か陰性かの判定をします(1分で判定できる方もいます)。鼻腔(鼻の穴)や喉の奥に、専用の綿棒で検査をします。 喉の奥よりも鼻腔で検査したほうが検査の精度が良い、と一般的にされていますが、時には喉の奥から判定した方がいい場合もあります。

 

インフルエンザの「診断」は、迅速キットは完璧な判定が出ないこともあり、迅速キットだけではなく、たとえ陰性と結果が出ても、症状や周囲の環境などから総合的に「インフルエンザである診断」をすることもあります。

診断ですが、「普段の風邪と違う症状だな」と思われたら、48時間以内に医療機関を受診することを重要です(ただ、発症から約7時間程度経っていないと、キットでは、インフルエンザだとしても陰性になることもあります) 48時間という時間が大事なのは、発症から48時間以上を経過してしまうと、インフルエンザウイルスの増殖を抑える特効薬が使用できないからです。

 

治療法ですが、主に3種類の薬剤があります。5日間内服をしていただく「タミフル」、吸入薬の「イナビル」(1日吸入するだけで、5日間の効果があります)、点滴薬の「ラピアクタ」(この点滴も基本的には1日点滴することで効果を発揮できます)が主な3種類で、患者様によって、最も適切と思われる薬を、お勧めするようにしています。

 

しかし何といっても一番なのは、やはり予防です。うがい・手洗い・人混みではマスクの着用、などです。予防接種には諸説ありますが、血液中の免疫を高め、たとえインフルエンザにかかったとしても重症化させないことがメインの効果です。特に高齢者の方はインフルエンザにかかり、同時に肺炎を患うこともあるので、予防接種は重要です。喉の免疫力を高める抗体を作るワクチンではないので、「かかりにくい」というよりは、「かかる可能性もある」という認識が、予防接種後も大事と考えています。

 

予防接種をされている方は、インフルエンザにかかっても、症状が軽微なことも多いため、「予防接種をしているからインフルエンザではない」と思わずに、医療機関を受診してみて下さい。