寒くなったり、急に暑くなったり、と天候が優れない日々が続いています。 皆様、体調はどうでしょうか?
この、6月13日に高知赤十字病院の先生が「VTE(静脈血栓塞栓症)の診断と治療 当院の使用経験を踏まえて」という演題と共に、私としては初めて、ネットTVでの中国・四国地方への配信という形で講演会をさせていただきました。 貴重な機会をいただいた赤十字病院の先生、また関係各者の皆様に感謝致します。
さて、私の講演の内容は、「医師向け」ということもあり、心房細動という病気について、ではなく、如何に心房細動を見落とさないか、また血液をサラサラにする薬の使い分け、心房細動と心臓リハビリテーションは凄く相性が良いこと、今後の血液をサラサラにする薬の使い方の注意点についてでした。 自分自身が胃カメラを通して経験したことや、自分が発表しただけでなく、論文や著書に書いたことなども踏まえて講演させていただきました。

ただ、問題定義としては、心臓リハビリテーションを専門とするなら、やはり血行動態といって、心臓の働きを詳しく考えないと、最近は「心リハ専門」といっても、余計に心臓が悪くなるといったことが報告されていたり、心リハ中の心電図は奥が深く、きちんと診断ができてないケースがある、ということをあげさせていただきました。 クリニックで行う心リハでは、患者さんの血行動態を把握するには、それ相応の心エコー機器が必要です。 患者さんに知っておいて欲しいのは、心エコー機器を操作するトラック・ボールという丸いボール(コンピューターで言うとマウスになります)が3cmのものを使ってないと、心エコーは専門ではないので、血行動態には関心がない、と思ってもいいと思います。 私自身、開業するに当たり、色んな機器を考慮しましたが、いくら最新の機器とはいえ、ここの部分が1.5cmのアンチョコ型(往診にもつかえる)だと、血行動態はおろか、心臓の手術をしなくてはいけない時期を逸する可能性があると思っています。 また、心リハ中の心電図は、運動中なので揺れてみにくいのですが、詳しく見ると分かることが少なくありません。 出来るだけ正しい判断と、診断をつけないで、流しているだけの心リハでは、クリニックで心リハ、ではなく、スポーツジムで運動するのと変わりません。 慢性期の安定した患者さまには、循環器専門医師であれば、急性期の経験がなくても出来る、と思っていましたが、今回、講演をさせていただくに際して、「心エコー」の詳しい知識、モニター心電図の読影、そして、私が恐らく「初めて」学会で教育講演させてもらった、「心臓病に隠れた癌」を意識しないのであれば、大病院でなく、クリニックでは「心リハ専門」は他のクリニックや大病院の循環器内科以外との連携が必要なことが再認識させられました。

「心リハ」は確かに、心臓病を持つ人にとっては、安心感を与える素晴らしい治療法ですが、そこで終了ではいけない、というのが、私の「心リハ道」です。 「心リハ術」どまりではいけないな、と、心臓リハビリテーションを勉強するのは当たり前で、その他の分野の最新の知見なども知るべきであると思います。

本格的に暑くなってきましたが、体調はどうでしょうか?

今年の糖尿病学会では、「尿に糖をだす薬」の「しばり」が緩くなり、今までよりも、糖尿病を専門とする医師が処方するケースが多くなると予想されます。 我々循環器専門医の方が先んじて処方をしていた、というのが世界の実情だと思います。 私自身は、この薬が効果を発揮するための処方前の予測因子を論文にし、またこの薬剤が筋力を低下させることはない、ということも報告していますので、処方が適切と思われる方に処方し、糖尿病が良くなった方には処方を中止したりしています。 また、先の糖尿病学会でも報告がなかったのですが、私自身の経験・解析で、よりこの薬剤の効果を引き出す投与の方法を、今回の講演で発表しました。 今後論文にするつもりです。

来週は、「心房細動」について、高知赤十字病院の先生と、一緒に講演会をする予定です。 私の専門の一つである「心臓リハビリテーション」は心房細動とは非常に相性が良いのですが、恐らく医師でも疑問に思っていることを報告して、聴講していただける先生方にとっても意義のある会にしたいと思います。
熱中症の方が何人かおられました。 水分摂取を心掛けてください。

「タバコ」はニコチン中毒でなかなかやめれません。 実は糖尿病もある程度、血糖値が高いままが続くと、「脳」が「あー、血糖は高くていいんだ」と勘違いしてしまい、血液中の糖が高いままになってしまいます。 これを「糖毒性」といって、タバコのニコチン中毒と似ています。

糖毒性の解除には、血糖を急激に下げすぎず、徐々に血糖値を正常に戻すことで、「解除」できます。 新しい糖尿病の薬、尿に糖を出す薬が期待されていますが、一番いい方法は、入院して食事の見直し、血糖値を測定しながら、インスリン注射をして、血糖値を適切にコントロールすることです。 「糖毒性」になってしまっていれば、「膵臓」がインスリンを「脳」からださなくてもいい、と働きかけられているので、正常に機能していません。 そこで、外部からインスリンを皮下注射して、脳と膵臓の機能を回復させる訳です。 ただ、既に膵臓の機能が悪くなってしまっている場合はインスリン治療が生涯必要(でないと死に至る場合があります)なこともあります。 しかし、膵臓の機能が残っていれば、糖毒性の解除でインスリンが必要なくなることもあります。
糖毒性をとるために、入院ができない方のために、当院では外来にてインスリン導入をしています。 低血糖にならないように、3−4回ほど短期間の間に指導をさせていただくと、安全に導入できます。

インスリン治療は膵臓を休ませる効果もある点で、糖病尿の治療薬を多量に内服するよりいいことがあります(コスト面でも実はインスリン治療の方が安いことがあります)。 また、インスリン治療がどうしても必要な場合に外来で導入できれば患者さんの負担も少ないと思います。
一番誤解されやすいのは、確かに生涯インスリンが必要な方もおられるのですが、一時的に使用し、その後は内服薬に切り替えすることが可能、また食事療法や運動療法で「治る」ことも知っておいて欲しいことです。

そして、糖尿病の方は、悪性腫瘍になる確率が免疫力の低下で高くなるので、肝臓をはじめとする、腹部エコーなどのがん検査が重要です。 血糖値イイネ、血圧イイネ だけでは、地域の方の健康を維持することは出来ないと考えています。

私は2050年まで皆様と一緒に健康でいられるように(私も含めてですが)、大きな病気にならない、なってもすぐ治療できる体制を一宮絆クリニックでは、大病院とも連携をとりつつ、頑張って行きたいと思っています。 (2050年を目標としたのは、私の指導医が掲げた目標で感銘をうけたので、書かせていただきました)

依頼内容は、主に血圧治療についてのことのはずでしたので、私も原稿を用意していたのですが、インタヴュワーは私の「いつ開業しても良いように逆算して仕事をしていた」という台詞に興味をしめしたようで、話は脱線気味でした笑
循環器内科にも専門があり、自分の持てる能力をどこに振り分けるか、という話や、その能力の総合値は一つのことをやり続ければ、違う専門についても知識や振り分ける最大の能力値があがること、また異なった科に振り分ける時は能力値が上がる、という漫画を例えにした話も雑誌の記者には良く分かってもらえたと思います。 大きな病院でサボろうと思えば実はサボれます。 しかし、開業を逆算した場合、胃カメラ(大腸カメラ)や腹部エコー、甲状腺エコー、頸動脈エコー、CTの読影技術は必要ですし、心臓リハビリテーション(心リハ)をするには重症例を経験しないと、「ドラゴンクエストで強い敵を倒さないと経験値は上がらない。 スライムばかりを相手にしても、決して到達出来ないレベルがある」という話も興味を持っていただきました。
血液内科・消化器内科・呼吸器内科の腫瘍を抗がん剤で治療し、デノシンという特殊な薬剤も何度も使用経験があり、気管支鏡で吸痰し、肺膿瘍・脾膿瘍(胸に心臓治療用のカテーテルを穿刺して治療しました)の治療、肥厚性硬膜炎による髄膜炎の治療、ネフローゼ症候群の治療をしていた循環器内科医でしたが、それらを「循環器内科」を同時に治療・経験する度に、循環器治療の幅がひろがって行くことが分かりました。
それらの経験が、基礎研究への興味となり、米国のフィラデルフィアに留学となったわけです。 開業後も論文を書き続けていました。 医者になれば、楽出来るのかな? と思っている昔の自分に言いたいのですが、医者になると、より勉強しないといけません。 もっと言うと、医学生の頃から勉強していないと駄目です。 医師になってから、自分を誤摩化すような行為(とくに私が苦労した心リハは奥が深く、経験がないまま、とはいわず、「専門で開業しました」、はサボった証拠ですね。病院時代からしている医師はサボっていません。他にすることがあるなか心リハの勉強をしているからです)は、サボった医師の得意技だと思っています。

この会は呼吸器と循環器(心臓外科)のスペシャリストの先生が毎年きて講演をしてくださる会で、非常に勉強になるため必ず出席して勉強するようにしています。

講演会のあと、講師を務められた京都大学の心臓血管外科の先生を囲む会に誘っていただき、高知大学附属病院の心臓血管外科教授、近森病院の副院長先生方や心臓血管外科の先生、高知赤十字病院の循環器内科部長の先生と一緒に食事をする機会を頂きました。 講演会では聞けないような内容は、非常に私の財産になりました。 こういった素晴らしい先生方との「雑談」を通しての医療の話ほど、日常診療に大事なことはないとすら思っています。
今後、循環器内科の診察や、心エコー検査、心臓リハビリテーションを行って行く上で、私の中では一つ階段を上れたと思えた素晴らしい会でした。