循環器内科(心臓内科)で、診察の中心は、聴診だと思っています。 心臓の打診は意味がないことがわかっています。 私の聴診と心エコー検査の恩師は、聴診・心エコーの世界では、循環器の医師なら「知ってないとモグリ」と言えるほど名医である、福田信夫先生です(徳島には福田性が多く、親戚ではありません) つきっきりで5年間(そして今も関係は続いています)教えてもらいました。 耳と耳の間には脳があり、聴診器で聴くだけじゃなく、その音を考えるようにトレーニングを重ねました(ちなみに、頸静脈の見方、は私独自の説明画像を作り、「これは凄いな」と20代のころ褒めてもらったこともあります。 その画像は福田信夫先生が今も使用しているとのことで大変光栄に思っています)

診察の中心を担う、聴診所見。 循環器内科でも苦手な人もいるでしょう。 ちょっと信じられない音を見逃したりしている例をみかけます。 これはある程度仕方ないことかもしれない現象かもしれません。 聴診は、スキルがない人は、自分では勉強できません。 一番いいのは、名医に自分が聴診した結果を話し、その後かわりに聴いてもらい、ディスカッションすることが最も効率的で、それ以上の勉強方法がないからです。 私はラッキーでした。 さらに認めてもらいたくて勉強も人一倍したつもりです。 聴診器を画像化した心音図もとり、講義をうけることができました。 私は開業することを念頭におき、心臓カテーテルはもちろんですが、聴診などの一見「地味」ともとれる技術(スキル)を磨いていました。

循環器専門医といっても、だいぶ差があるのです。 特に開業医で、専門医の資格をかざすなら、聴診がうまくなければ… 専門ではないような気さえします。 これは医療者としての意見です。 医療者の考えをもって、患者側にたったとき、「この先生、聴診上手じゃないな」と気づいてしまうからです。

昨年は、インフルエンザの問診のときに聴診器で、「肥大型心筋症」を診断しました。 ほっておけば突然死もありえる病気です。 すでに成人になっているので、「今まで健診していたときは、本当に聴診していたのか」と、本当に不思議に思いました。 毎年のインフルエンザの時にも気づかれなかったのか? 風邪をひいたときのかかった医師は気づかなかったのか? 自戒の念をこめて、今後も自分自身のスキルを自分で高める方法も学びましたので、高めていこうと思う次第です。

メインの講演は、近森病院の深谷先生の、抗凝固薬の現状 でしたが、その前座として、講演を20分だけしてきました。
今現在、納豆を食べても良い、新しい抗凝固薬が4種類でています。 1種類は出血しても拮抗薬があるため、カテーテル・アブレーションという、心房細動を直してしまう治療をする方が手術まで内服してもらうことが多いのですが、消化器の症状(下痢や腹痛)などが多く、最初に出すお薬ではありません。 では残りの3種類はどうでしょうか?
私は逆説的に、昔からある、納豆を食べてはいけない薬「ワーファリン」が、もし今年発売されたとした世界、を仮定した場合、実はワーファリンは優れた薬である、ということから講演をはじめました。 恐らくこういった趣向は初めてだと思います。 そうすると、今ある新しい抗凝固薬で生き残るのは… という内容です。
高知県は朝・夕の薬を出しても、お酒を飲む方が多いため、そのことを考慮して、処方をするべきだと結論づけました。 私は講演会をする時は、必ず本音で言います。 例えば、心臓病を患い、大きな病院で半年か1年に一度かかり、クリニックで毎月同じような心臓関係の検査をするのであれば、全く意味がないと思っています。 なので、私はまずは大病院での循環器専門医と同時に、大病院での内科の専門医としての研鑽をし、その後今では、開業医型の総合医として皆様の健康を考えたいと思っています。 私が、一宮きずなクリニックで、循環器内科だけをして、胃カメラ、腹部エコーをしていなければ、今頃は癌が転移して… という方もおられました。
日本の医療では(海外でもそうだと思いますが)、自分で自分の体のことを勉強したりする機会は少なく、とくに全身を勉強することは仕事しながら、また日常を送りながらでは難しい。 なので私のようなものがいて、こういう検査が必要で、検診しているなら、この部分が足りない(足りているので大丈夫)などのアドバイスが出来ればと思っています。 循環器だけのクリニックで、胃カメラや腹部エコーは難しいでしょう。 今から勉強するわけにはいきません。 なので、他のクリニックに紹介するなどを怠ってほしくないと思いますし、私も、怪しいな、と思えば、専門家に紹介することを常に頭の片隅に置いています。

9月10日(日曜日)に、瀬戸内エコーセミナーの講師として、徳島大学の恩師である、山田先生から依頼をいただき、講演してきました。 エコーのセミナーの会社としては最大手の「アスリード」という会社との連携であり、アスリードは私が何ども受講生として参加したセミナーです。 まさか一町医者になって、講師となるとは思っていなかったので、貴重な体験となり、また、講師陣である山田先生を筆頭に、山口大学の和田先生、東北大学の技師の三木先生とお話できる機会ができ、非常に私自身にとっても勉強になりました。
今現在の最先端のエコーの知識だけでなく、論文を読み漁っている先生方の知識を吸収することができました。
今回の経験は、一宮町の皆様に生かせれることが出来ると思います。
私自身が、町医者として、大きな病院での知識を食い潰すことだけはしたくないので、今後も「情報発信型」の医師として、地域医療だけども、最先端の医療を提供できるようにしたいと思います。

 

糖尿病の薬のなかで、アマリール、ダオニール(これを出されたら、診療所を変えた方が良いです、良いことは一切ない薬と現在はされています)、グリミクロンという、膵臓に働きかけて、インスリンを無理矢理ださせる薬があります。 15年前の薬です。 私は使いません、が、他院でアマリールやダオニールが出されている方が、「良くならない」という場合に、一番弱い、グリミクロンにして、そのうち新しい低血糖を起こしにくい薬に変化させる時につかうくらいです。 上記の3つの薬がでているのに、HbA1Cという糖尿病の悪さを表す値が8.0%を超えているのは、「その薬が効かなくなっている」、専門用語で「2次無効状態」と言います。 脳が、「血糖値はこのくらい高くていいんだ」と思ってしまったり、最悪、膵臓を頑張らせすぎて、膵臓からインスリンがでなくなってしまった状態かもしれません。 こうなってしまうと、「インスリン導入」して「糖の中毒=糖毒性」を解除して、膵臓が復活する可能性をみてみるか、上記3つの薬から、新しい薬に変えて、膵臓を守る方向で様子をみることが大事です。
何が言いたいかというと、アマリール、飲んではいけないダオニール、グリミクロンが処方されてしまった場合、その後、良くならないまま、漠然と処方をされて、「食べたお前が悪い」と言われたら、「処方してる奴が悪い」とまでは言わなくとも、「もう2次無効になっているのでは?」と言ってみてください。 それで、3つの薬が増量されたりしたら、かかりつけ医を変えた方がいいです。 低血糖のリスクだけが上がる間違った処方です。
ちなみに上に書いたことは、内科医であれば、「落書きしてはいけません」程度のことです。 最近、グリミクロンが徐々に増量されて、HbA1cが昨年の7.0台から9.0→9.3となっている方が当院を希望されてこられたので、「まだ、こんな処方がまかり通ってるんだ」とびっくりしたので… ちなみに昔は、「取り敢えず、アマリールだしとけばいい」という風潮があったことは事実です。 そのなごりで「アマリールより弱いグリミクロンなら、罪も少ないだろう」という処方した医師の考えが透けて見えます。

昨年の9月1日に「一宮きずなクリニック」は開業となり、その間、私自身が描いていた診療スタイル、「癌を疎かにしない、専門的循環器医療」が、実践出来たのではないか、と振り返って思います。 当院に血圧で通院しだした患者様が、食道がん・胃がんの早期治療ができたり、腎臓がん・悪性リンパ腫の早期発見、膵臓の嚢胞性疾患(癌化する恐れ)は、私が消化器内科をも研鑽していなければ、これらの方は、寿命が短くなった可能性もあると考えると、開業した甲斐はあったと思います。 循環器だけをみるクリニックでなくて本当に良かったと思います。
これには、スタッフワークもかなり関係しています。 患者さんに適切な接遇をすることはもちろん、医療者同士でも、お互いに、ちょっとした一言や、診療時間外にユーモアを交えた会話などは、絶対的に必要だと思います。 これらを実践してくれたスタッフが居てくれたからこそ、私のもてる力が120%発揮できたと思っています。