とあるご縁で講演会に呼ばれることがあります。 講演会の対象者は65歳以上の高齢者の方々。 中には当院にかかっている患者様もいて、合計50−60名はいたのではないでしょうか(いつも盛況です)?
執筆された本も頂いています。 それにしても内容が難しすぎるのでは? とメモを取りながらスライドを見ていたら、周りの人もメモをとってすごく勉強しています。 なぜなら「分かりやすいから」です。 具体的でもあります。

「日本は以外と住みにくいところと、データがあります。 そのためにちゃんと老後にお金を残しておきましょう、残らない人はこんなパターンで、残すならこういう方法があります」

実際に、医者が説明会を日曜日にしたりすると思いますが、ここまでのことを1時間全然長く感じさせないスライドは初めてだったのです。 スライドを1枚もらいました。
一宮地区の高齢者の方は、この先生の講演が100円で聴ける、という幸せがあります。

「抗生剤のブログ、発表、面白いね。 一宮の人のためになってるよね」と。

また書きます、と、返事させていただきました。

見てくれている人が、色眼鏡で見なければ、やっぱり思いは通じるんだ、と救われました。

もちろん、そこには私の意志があるのですが、ブログは患者様のためのものに最終的になればいい、という考え方が間違ってなかったと言ってもらえたようで嬉しかったです。

風邪は万病の元、とはよくいったもので、私は風邪を見るのが最も難しいと思います。 「風邪」できて、実は髄膜炎だった、実は脾膿瘍だった、実はサイトメガロウイルス感染症で、特殊な治療をしないと死亡してしまう、というのが「風邪」です。 ここまで見て「風邪じゃないじゃないか。 風邪っていうと、ウイルス性感冒、ウイルス性咽頭炎のことでしょう」と反論が来るかもしれませんが、ではまずなぜウイルス性と言い切れるのでしょう? その風邪、細菌性にすでになっているかもしれませんよね? さらに上記の難しい病気も感冒の症状、発熱、関節痛、頭痛、咳を患者さんは訴えてくるわけです。 なので「風邪」は難しい。 私は、いろんな症例、報告(論文)、感染症専門医の話、などから、「まず診断をつける。 次に適切な抗生物質の投与が必要か考え、必要ない理由があれば、投与はしない。 さらに詳細な検査や経過を追った方がいいのかどうかを考える」と思いながら風邪を見ています。 適当にみられていませんか? その処方なら「ルル」飲んで家で寝てた方がまし、という医者にはかかりたくないですよね(実は結構そういう医者っているんですよね、最初から風邪をみないか、見せたら最悪、とかです)? ちゃんと私は答えを話し、その後どうすれば良いかを、風邪以外でも話すことが医師の務めだと思います。 エコーで分かりづらかった脾臓の影を造影剤を利用したCT検査で診断し、最終的には脾臓を摘出までしました。 最初は「風邪をひいた」だったんですね。 もし入院でなく、抗生剤も投与をしていなければ、、、 膿(うみ)が全身にまわって死亡していた症例です。 38.4℃が昨日からですかぁ、じゃあ熱が上がった時にカロナールをだしときます、ではダメですよね。 聞いてみてください、なぜその処方なんですか? って。 抗生剤を出すのがまるで「悪」のように言われているのが最近のトレンドです。 自分で痰を染色できる医者はほとんどいませんし、私は教えてもらって一時期はできましたが、もう忘れましたし、実際の外来ではそんな暇ないのが現状です。 しかし、一度でもできるようになっておけば、想像はできます。 教えてもらうだけなら、その医者よりも上手に見ることはできませんし、説明も下手になります。 説明が上手な医師ほど、名医なのではないでしょうか?
あなたが対峙した医者は、耐性菌ができてしまいますよ、という理由以外の「抗生剤はダメ」の理由が言えるでしょうか?

近い将来、「心不全」という、心臓の機能が悪くなる患者さんが多くなりすぎる、という医療業界だけでなく、今後(今も?)はTVでも発信されるはずの用語です。 心不全は「だんだん」と悪くなる最中に「突然、急変する」病気です。 ステージがあり、微細な心臓の障害を「A」とされますが、このAの段階で治療を開始し、Bに進ませない、のが治療の基本です。 これは知っておいて欲しい知識です。 Bになってしまうと予後、つまり長生きや、入院を繰り返す体になってしまうからです。

さて、私は心エコー検査で、stage A だと思った症例を、違う目で見てらおうと紹介する例があるのですが、中には理由もなく、「問題ないので」と1年後紹介先で経過観察をする、ということがあり、少し困惑したこともあります。 また、「全く問題ないですよ」という返事に対して、このままでは患者さんが(俗っぽい言い方ですが)ヤバいと思い、違う病院で心臓CT検査をしたら、「拡張型心筋症で、原因は(私の紹介どおり)左室緻密化障害です」(実はCTでは診断基準がなく、エコーでするものなのですが、CTの方がよく分かる場合があるのです)
そういった方に投薬をして半年、心機能が改善していました。 これは私にとって、もちろん患者さんにとっても、嬉しいことです。 寿命が伸びた、と言っても過言ではないでしょう。 それにしても、明確な理由を述べて「処方なし」なら良いのですが、明らかにstage Aと分かっていながら、投薬なしで、「悪くなったら投薬開始」、「悪くならなければ、また経過観察」というのは、良くないでしょう。 投薬の結果で良くなるかどうかを、せめて半年後に経過観察すべきです。 「悪くなってから」では遅いからです。
たくさんのそういった症例をみてきました。 心機能が悪くなるには何か原因があるのが普通で、ないならないで、遺伝の因子も考えなくてはいけません。 大きな病院では心臓CTや心臓MRIなどができるので、原因を追求できるのです。 それが「病診連携」だと思います。
実地の重症例などを責任をもって治療したり、外来でも開業医からの僅かな心機能障害の紹介をうけていたものとしては、病院で出来る精査をして投薬で半年後経過観察をして(もしくは紹介元が心エコー専門ならまかせて)、その後は紹介もとのクリニックで経過観察をしていた時代があり、いくら大病院で、熱心に情熱をもって治療していたとしても、原則を教わる時期が終わってしまった、もしくは昔はそうしていた、では、紹介しても患者様に迷惑がかかります。 私が大病院にいたときはは、紹介をうけたら、原因をできるだけ精査して、クリニックに返事を書いて、何かあったら再度紹介してください、とするように常々教えられてきました。 それが、今のクリニックでいきていると思いながら、よくなった患者様をみて、患者様も安心、私も安心している次第です。

私は常々、医者には「センス」と「エッセンス」が大事だと思っています。 外科で「何例経験しましたか?」は、実際はそれほど意味がなく、年間100症例でも50症例でも、「考えながら」「進歩しながら」すると、50症例の医師の方が信頼がおけます。 心臓のカテーテル治療においても、だらだらと100症例ステント治療をしても意味がありません。 75症例くらいでも、「センスを磨きながら」、「コツをつかめば」、300症例したものと同じだと思っています。 さらに重症例を経験したかどうかも大事です。 私は、PCPSを入れ(最近は組み立てれない医師も多いのではないでしょうか?)、とりあえず、心臓がとまりそうでも脳や体の組織に血流がまかなえる状態にできる自信があったので、その後、カテーテル治療をする例もたくさんありました。 また、香川にいましたが、本州のいろんなカテーテル治療のライブを見に行き、「ステント」と呼ばれる血管を拡げる補強材についても、実際は少し、各社によって違いがあるので、それを理解した上で、きちんとステント自体が「ある」ことも確認して治療していました(欠陥品がごく稀ですがありました)

飛び抜けた知識をもつ「心エコー」の知識を持つ医師は各県で数名いると思います(開業医なので、誤解されることもあると思うのですが、私も四国こどもとおとなの医療センターでは、私のエコー(胃カメラのようなエコーもしていました、心臓手術中もしていました)で手術適応が決定され、若い方の心エコーで異常があった場合の治療方針を決定していました。 現在は、大きな病院では、他の医師と相談できないこともあり、紹介することもあるのですが、紹介先で心エコー検査で「異常無し」とされ、それはおかしい、と思い、心臓CTで他院に紹介したところ、私の見立て通り「拡張型心筋症で、左室緻密化障害です」という症例がありました。
心エコーだけする、という医師は、相当な知識が必要ですし、そういった医師もいます。 私自身の私見ですが、緊急のカテーテル治療をして、エコー検査も自身でする、というのがベストではないか、と思う次第です。
ちなみに、急性心筋梗塞の患者様で、スワンガンツ・カテーテルをして、その直後に集中治療室で心エコーをした論文は、私が調べた範囲では、私の論文だけです。
心エコーは「心臓の中の圧を推定」できますが、絶対値はわかりません。 スワンガンツ・カテーテルは「実際の圧」を測定できるので、心エコーの重みが違う、と思う次第です。

生半可な心エコーだけでは(今まで大きな病院で、教えてきた先生の中には、「エコーだけします、カテはしません」という方がいるのも事実で、それも人それぞれだと思いますが、自分は安全圏にいて、手を汚さない頭でっかちな医師になってほしくないな、と思って指導していました)、患者様には不利益になりますし、その方の将来を見越した治療やフォロー(経過観察)が必要と思います。 そのためには、「病診連携」が大事だと思っています。 私自身が、紹介する場合は以前にも書かせていただいたのですが、他人の目で見てもらい、心エコー以外の検査が必要かもしれない、と思う患者様です。 かかりつけ医としては、患者様の希望にもよりますが、心エコーの経過観察は当院で十分だと思っています。

私が師匠、と呼んで、師匠側からしても、私が弟子である、というのが、現在日本でも心音・心雑音のトップランナーでもある、福田信夫先生です。 心エコーに関しても学ばせていただきました。 実は、血圧が高いかどうかは聴診器でもわかりますし、肺塞栓症(エコノミークラス症候群)もわかります。 弁膜症も心エコー検査で軽度か、それ以下の微量なものかは「聴診器で」判断するのが正しい、と教わりました(実際に私の心エコー・レポートはそうしています)

私自身は、肺の音、お腹の音も重要と思い、音響学の本を読み、音響や物理関係の医療と関係ない仕事をしている友人と心音も、他の部分の音についても勉強したり、自分自身で統計学的な手法で勉強しました(ちなみに、特許で貧血をみる装置、も同じように統計学的に勉強した結果です)
複雑な心疾患を心音で読み取る能力も大事だと思いますし、第一線で働いているときはそういった患者様をみているので重要と思っていましたが、クリニックで診察をする場合、心疾患がある、とわかれば心音図検査など大きな機械もありませんし、時間もありませんので、エコー検査を結局するわけなので、そこまで詳しい心疾患の推測が聴診器で必要とは思わなくなりましたが、「聴診技術は心エコー検査の見落としを防ぐ」の格言のごとく、聴診器をあてられない心エコー検査など「全く」意味がないと私は思います。 エコーをする側にもされる側にもデメリットだけです。

さらに、肺の音が聴き分けれないと、処方してはいけない薬などもあります。 循環器の薬でもそういった薬は

ありますし、 私は内科医として関節リウマチの治療もしていましたので、間質性肺炎の音や、その成因についても理解していないといけないと思っています。
さらに、腹痛の患者さんに対して、聴診器は非常に有用です。 私の場合は、放射線科で1年の研修をさせてもらったので、お腹に聴診器をあてて、さらに腹部をさわることで、CTではどうなってるかな? と 想像しながらお腹を触っています(もちろん、心臓の音を聴くときはエコー検査が頭に浮かぶようになっています)
聴診器だけではいけませんが、心臓の音だけでも内科医としてはやっていけないし、エコー検査、CT検査の結果を理解できるようになっていないと、お腹の音を聞いてもあまり意味がないと思っています。
放射線科医は、ドクターズ・ドクター という位置付けで、医者に対して教える医者、ということであり、莫大な知識が求められます。 研鑽をつませてもらって本当に良かったと思っています。 これは、自分から教わらないと教えてくれませんし、教えてもらいたいと思っても、ちゃんと教えてもらう「態度」が大事だったな、と思います。 高飛車な態度で人間関係を膠着させるようでは、本当のコツ、など教える気にならないと思った次第です。