私は糖尿病治療に関しては、ただ単に血糖値を下げればいい、は間違いで、同じ下げるにしても、その過程にこだわる治療を心がけています。 糖尿病の治療薬には色々あり、膵臓を酷使して下げる薬で血糖値をさげてもいいことはありません。
さて高血圧はどうでしょうか? これは、過程も大事ですが、目標値まで下げること、が優先されます。 もちろん患者さまにあった治療薬を選択するのですが、最終的にどこまで下げたか、でその方の長生き度が必ず変わります。

私は上記を念頭において、さらに新しい知見を勉強しながら治療していますが、上記と逆の考え方で治療されている患者さまがおられる場合があり、危惧しているのが現状です。

※血糖値は最終的にどこまで下げたかが大事、血圧はそこそこ下げていれば症状もないから大丈夫、といった具合が良くない、と言い切れます。 最近の潮流は私の意見で間違いありません。 古い治療をされているな、と思ったら、相談に来てください。

私が医師になるだいぶ前はインターン制度といって、大学を卒業した後1年間の不安定な給料のもと、実地医療を積んだ後、医師国家試験をうけられる制度であり、約40年前に廃止されました。 この制度はどうだったか経験がないのでなんとも言えませんが、現在65歳以上の医師はその制度を受けていた可能性があります。 その後は法律上「研修医」という言葉はなく医師国家試験に合格した時点で「医師」となるのですが、どんな医師もどこかの医局に入るのが当然の時代でした。 流れとしては、卒業した大学に残ってそこの大学の医局に入り、その大学病院が「ジッツ」といって「支配」している病院に医局員を派遣して、臨床力を鍛える、大学病院では研究をする、という制度でした。 最近はマッチングといって、自分が行きたい大学や病院を書いて、医師国家試験以外に試験をうけて、そこに受かればその大学(医局ではない)や病院の「研修医」として、全科を2年間まわって、その後専門の科にはいるか、医局に入ります。
さて私は、マッチングに移行する前の世代です。 沖縄中部病院という有名な病院で研修医が過労死したのが衝撃的でしたが、私の周囲の友人は、逆に自分を鍛えたいから、医局はいつでも入れるので、一般病院に行きたい、といって英語でそこの病院の勉強をしていました。 私も、後からくるマッチングの医師に負けたくない(実際はマッチングの最初の時期はお粗末な制度(今は大学や病院によると思います)で、学生の延長だったので全然驚異は感じませんでした笑)という思いもあり、京都の日赤に受かり、上層部が教育熱心で、現場は慣れてない、という感じでしたが、2日に1日当直の手伝いをして、救急医療をしながら、消化器内科を目指し、糖尿病、循環器を中心に研修しました。 現在は、学生の取り合いのようで、「うちにくると、こんなことを教えます」、さらに「よくきてくれました。 当病院(大学含む)のどこかの科に入ってくれれば、こんなことを責任をもって教えるよ」 という時代です。 昔は努力しなくても「だいたい同じレベル」の医師が生産されていた時代(頑張ったり才能がある医師は特別伸びる、のは今も同じ)、から今は、「教えてもらって当然」という研修医も多く、実際はかなり自分の努力がないと、取り残されている医師も多いのでは、と思う医師もいました。 「教えてもらって当然」という医師の気持ちは分かります。 徳島大学時代は5年生の循環器の学生さんを教える係をしていたんですが、私は「背中をみて盗め」は大嫌いだったので、自分自身が教えられることはすべて教えてました。 やる気がある学生には、私の仕事が終わる(実際は終わってない)20時から学生に教えたり、病院勤務時も自分の知識や、「私の勉強法」のすべて教えていました(自分を出し惜しみする医師は多いのです) そうしないと、患者さんの迷惑になると思ったからです。
最後に、マッチング以降の医師は社会背景(医療崩壊)もあり、多様化していて、意識が低い医師もいれば、楽な科(もしくは厳しい科でも自分の手をよごさない仕事を専門にする)医師が増えています。 もちろん意識が高い医師もいますが、私の時代は、少なくとも、「地べたを這いずりながら」24時間勤務体制で患者さんを診て、そのかわり、上級医に極意を教えてもらったりしてもらっていたのですが、今の医師は、自動的に教えてもらえるので(そうしないと、その病院の科に入ってもらえないので)、ハングリーな医師の絶対数は減ったな、と思います。
医師という職業は、「お金儲け」ではないと思っています。 しかし最近は「サラリーマンになりたくないので医師になり、責任はもちたくない、プライドの高い公務員医師」が生産されている感じです(もちろん、徐々に意識が高い研修医もいて頼もしく感じます) 人それぞれの考え方があると思いますので、それを否定するわけではなく、私自身のスタイルは変わっておらず、自分の教えられる範囲のことは全て出し惜しみなく話すようにしています。

血糖値、遡って1(-2)ヶ月の血糖値の平均値のHbA1cで糖尿病はコントロール、、、は半分当たって、半分は「間違い」です。 言い切れます。
血糖値、HbA1cはどこまで下げたか、より、どうやって下げたか、が重要な場合があるのです。

私は循環器内科を専門としていますが、糖尿病と心臓病について、以前より消化器内科や呼吸器内科などと同時に、糖尿病治療に重きをおいていました。 結果、書く論文が糖尿病関連ばかりになり、海外の有名な糖尿病雑誌に、私の心臓病と糖尿病関連の論文が紹介されるまでになりました。 最近は、米国の糖尿病学会の一派の雑誌のreviewer(論文を査定する)係への依頼がきましたが、仕事をこれ以上増やせないので断りました。
さて、とある患者さんが、当院に来院感冒で、他院で「私は血糖のコントロールがいいから、大丈夫」と言っていました。 確かにHbA1cは6.5%とまずまずですが、、、
薬手帳を見てびっくりしました。 HbA1cが6.7%になったときに、アマリールという、最近は使わないか、つかっても超少量(基本私は使いません)の薬がもともと3mgと多く出ていたのが、1mg増量されて4mgになっていました(低血糖を起こすかもしれない危険な増量です)

※色んな経緯があるので、間違い、ではないのかもしれませんが、高齢者(に限らないと私は思いますが)に上記の処方は危険と思いました。

血糖を上手に下げるコツは、①食事の見直し(栄養指導)、②「適切な」有酸素運動、③下げ方にこだわった薬のチョイス、です。 当院では、①管理栄養士による栄養指導がうけられる、②私が心臓リハビリテーション経験士(県で医師で唯一初めての学会の評議員です)で「適切」な有酸素運動の指導ができる、③勝負(HbA1cを下げる)にもこだわるが、勝ち方(下げ方)にもこだわる知識と経験、統計的などの薬がいいかの自分だけが持っているデータで薬を患者さんと話して選ぶ、ことです。 さらに、糖尿病の方は癌になりやすく、その点も循環器系の学会では初めてといっていいと思いますが、5年間での悪性腫瘍と心臓病の関連を追跡調査した発表を3月にしています。 糖尿病の方は癌に注意が必要です。 こんな当たり前のことが最近注目されています。 10年以上前から専門医は当然のように言っていました。 私もその時代から「女性をみたら妊娠を疑え」のごとく、「糖尿病をみたら、悪性腫瘍に注意」と自分で格言をつくってみました。

なんにせよ、何十年かかっていようが、アマリールという薬が増量された場合、当院に来てみてください。 2次無効といってインスリンが必要で、増量は危険なだけの場合か、違う薬で糖尿病の正しい治療を致します。

とあるご縁で講演会に呼ばれることがあります。 講演会の対象者は65歳以上の高齢者の方々。 中には当院にかかっている患者様もいて、合計50−60名はいたのではないでしょうか(いつも盛況です)?
執筆された本も頂いています。 それにしても内容が難しすぎるのでは? とメモを取りながらスライドを見ていたら、周りの人もメモをとってすごく勉強しています。 なぜなら「分かりやすいから」です。 具体的でもあります。

「日本は以外と住みにくいところと、データがあります。 そのためにちゃんと老後にお金を残しておきましょう、残らない人はこんなパターンで、残すならこういう方法があります」

実際に、医者が説明会を日曜日にしたりすると思いますが、ここまでのことを1時間全然長く感じさせないスライドは初めてだったのです。 スライドを1枚もらいました。
一宮地区の高齢者の方は、この先生の講演が100円で聴ける、という幸せがあります。

「抗生剤のブログ、発表、面白いね。 一宮の人のためになってるよね」と。

また書きます、と、返事させていただきました。

見てくれている人が、色眼鏡で見なければ、やっぱり思いは通じるんだ、と救われました。

もちろん、そこには私の意志があるのですが、ブログは患者様のためのものに最終的になればいい、という考え方が間違ってなかったと言ってもらえたようで嬉しかったです。

風邪は万病の元、とはよくいったもので、私は風邪を見るのが最も難しいと思います。 「風邪」できて、実は髄膜炎だった、実は脾膿瘍だった、実はサイトメガロウイルス感染症で、特殊な治療をしないと死亡してしまう、というのが「風邪」です。 ここまで見て「風邪じゃないじゃないか。 風邪っていうと、ウイルス性感冒、ウイルス性咽頭炎のことでしょう」と反論が来るかもしれませんが、ではまずなぜウイルス性と言い切れるのでしょう? その風邪、細菌性にすでになっているかもしれませんよね? さらに上記の難しい病気も感冒の症状、発熱、関節痛、頭痛、咳を患者さんは訴えてくるわけです。 なので「風邪」は難しい。 私は、いろんな症例、報告(論文)、感染症専門医の話、などから、「まず診断をつける。 次に適切な抗生物質の投与が必要か考え、必要ない理由があれば、投与はしない。 さらに詳細な検査や経過を追った方がいいのかどうかを考える」と思いながら風邪を見ています。 適当にみられていませんか? その処方なら「ルル」飲んで家で寝てた方がまし、という医者にはかかりたくないですよね(実は結構そういう医者っているんですよね、最初から風邪をみないか、見せたら最悪、とかです)? ちゃんと私は答えを話し、その後どうすれば良いかを、風邪以外でも話すことが医師の務めだと思います。 エコーで分かりづらかった脾臓の影を造影剤を利用したCT検査で診断し、最終的には脾臓を摘出までしました。 最初は「風邪をひいた」だったんですね。 もし入院でなく、抗生剤も投与をしていなければ、、、 膿(うみ)が全身にまわって死亡していた症例です。 38.4℃が昨日からですかぁ、じゃあ熱が上がった時にカロナールをだしときます、ではダメですよね。 聞いてみてください、なぜその処方なんですか? って。 抗生剤を出すのがまるで「悪」のように言われているのが最近のトレンドです。 自分で痰を染色できる医者はほとんどいませんし、私は教えてもらって一時期はできましたが、もう忘れましたし、実際の外来ではそんな暇ないのが現状です。 しかし、一度でもできるようになっておけば、想像はできます。 教えてもらうだけなら、その医者よりも上手に見ることはできませんし、説明も下手になります。 説明が上手な医師ほど、名医なのではないでしょうか?
あなたが対峙した医者は、耐性菌ができてしまいますよ、という理由以外の「抗生剤はダメ」の理由が言えるでしょうか?