肺は主に、空気をはこぶ気管支、血液をはこぶ血管と、それら中間の間質に分かれます。 これがくっきりわかるのがCT検査です。 CT検査を何枚見たかも大事ですが、1例を掘り下げて、事の成り立ちを理解すると、レントゲンでCT検査を想像できるようになるのですが、当たり前ですが限界があります。
ただ、数学の公式のように、また歴史学の4大文明のように、「このパターンのCTなら、これが考えられる」と言えるのが医師であり、なんでそういう風に見えるのかも説明したいな、と私は思っています。 例えば「モザイク・パターン」という、CTの所見があります。 一見、両方の肺に薄いすりガラスのような病変がみえるので、間質の病気、間質性肺炎と間違えられやすいのですが、モザイクであるということは、気管支や血管が運んできたものによって、病気が出てきている、という証拠なのです。 よって、アレルギーのように、抗原を吸い込むことによってモザイクにみえる「過敏性肺臓炎」、喘息がひどいときに、空気を吸い込める場所が限定されてしまってモザイクに見える「喘息発作」、めずらしいのですが、血栓(血の塊)が飛んで行ってモザイクにみえる「肺塞栓症」などが鑑別に上がります。

こういったことは、一回患者さんの治療を上級医と経験して、自分で調べて、二度と忘れないようにすることや、どうしてそのように見えるのかを自分で勉強することが大事です。
私が患者の立場なら、答えだけを教えてもらうより、理由を教えてもらった方が、納得するからです。
そのためには、自分だけでなく、他人(医師)に教えてもらうことも重要です。 一人で、すべての疾患を見ることは到底無理な話で、全知を振り絞った結果の診断で治療をすることが大事だと思う次第です。
そう、まずは「診断」なのです。 ここが入り口です。 内科の醍醐味であり、患者さんに信用してもらえるかどうかも、「診断」なのです。

正しい「診断」さえつけば、「治療」はほぼ決まっています。
その正しい診断は、その時、その瞬間につくこともありますが、治療していく経過でわかることも知っておいてほしいことです。

ゴールデンウィークが過ぎ、明日から仕事という人も多いのではないでしょうか?

メンタルヘルスという観点から言うと、人に言うアドバイスとして、仕事をかかえて、ストレスが溜まっている人、とくに鬱状態の人に「ストレスを少なくしてね」というのは全く意味がないそうです。 なぜか? それは具体的ではないからです。 では具体的にストレスを減らすのには、、、休む事(寝る事)、嫌な人を避ける事になります。

医師から「血圧が高いからストレスを少なくね」と言われても、私が患者の立場なら何をすればいいのか分かりません。 休む事=寝る事、としたのは、「ストレス発散だ!」と旅行に行ったりすることは気晴らしにしかなりません。 私見ですが、逆に持っている元気が少なくなってしまうのではないでしょうか?
嫌な人に会うな、というのは仕事上難しいと思います。 そういう場合は、出来るだけ避ける、に限ります。 必要最低限の仕事の付き合いをして、他は話さない、これが一番だと思います。

ここでいう「嫌な人」とは、その人にとって、「立場上、自分より、上にいてパワハラをうけ、相談するのは、そのさらに上司になって本人には直接言えない」、もしくは、「同じ立場でも、集団でイジメ(大人の社会でも実際にあるので、この時代にこういう言葉を使うとは子供の頃は馬鹿馬鹿しくて思いませんでしたが、実際にありえますので、笑い事ではありませんね)をしてくる輩(やから)であり、同様に直接言えず、上司に相談するしか方法がない状態」が当たります。 本人に対して直接言えたり、陰口を叩けるなら、自分がそうなっているかもしれません(いじめている本人に自覚がない証拠ですね) 私自身も、傷ついた人の立場にたったりすることが重要と思っています。 何事も相談できる上司がいることは頼もしいことだと思います。

有名な医師は、教授などにならなくても本を出す時代になってきました。 ただ、ここで自己満足な「自費出版」を他人に売りつける行為はどうかと思います(その形態の方が安く仕上がり「売りやすい」のなら話は別ですが) 私は35歳と37歳の時に、印税(全て寄付しています)が入る、「商業出版」をしています。 つまり手元には自分の本はありません。 しかも講演会などでは、本の内容は私のものではなくなっているので、形式上は出版社に筋をたてなければいけません(本の宣伝になるので、今の所、「OK」をもらっています)

さて、3冊目は本当は書き終わっているのですが、仕上がりがまだです。 その途中に、30人ほどで書く、9月出版予定の本が先にでそうです。 「心臓リハビリテーション」の本ですが、開業医では私ともう一人だけ。 ちなみに四国でも声をかけていただいたのは私だけです。 これは、普段から前向きな姿勢と、なにより論文、学会活動が評価されてのことだと思っています。

どのような構成にするか迷ったのですが、始めての人でもわかるように、また読み手を想像して書いてみました。 また9月中旬頃になると思いますが、クリニックに1冊置こうかと思いますので是非みてみてください。

これは私が初めて世に出した「FIT index」というものです。 おそらく今年の9月頃に「心臓リハビリテーション」の教科書が発売されるのですが、その中でも紹介しています(著者のなかの一人で、四国では私一人、開業医では私ともう一人の二人だけです)
当院の心エコー機器には自動的に算出されるようになっており、その日の体調にもよりますが、「有酸素運動」の脈拍がこの、FIT indexで算出されるようになっています。 私はこのFIT index以外に、左室の機能をみる「SEA socore」なども論文化しています。

他にも、血液を調べるときに、貧血がなく、骨髄の病気がない人に限り、MCVという項目が必ず採血では出てくることが多いのですが、これを、食事でどのくらいタンパク質を脂肪や炭水化物との比較で摂取したかの指標として、「PIM: protein intake maker」として論文とし、糖尿病薬の効果が出やすいかどうかという報告も論文化しています。

つまり、糖尿病の薬を選ぶときに、色んな論文を書いているので、その人にあった薬を選択できるのが、私の強みです。 これは糖尿病専門医でも気づいてないこともあります。 例えば心機能や筋力の関係と、糖尿病薬の効き目などです。

私は推理小説が好きで、自分で書くこともあります(実際に、著書「恋する心エコー」はミステリー形式で書いています)

推理小説では、私は「アリバイ」だけが犯人当てに役立つと思っているので、犯人を疑う順番は、①作者(文章の力で殺害) ②名前のあるエキストラ ③実はカメラ目線の人がいる ④探偵や助手 そしてやっと⑤容疑者 の順番にアリバイを崩して行きます。

しかし医療において犯人当て(病気の診断)は、全く違います。 まずは、一発診断です。 心エコー検査や、心電図、採血検査で「急性心筋梗塞」「心不全」と診断出来ます。 次に、キーワード診断です。 黒色便があり、お腹の上が痛い、というキーワードで、「胃潰瘍」「胃癌」が考えられ、胃カメラ(私の造語だと、「咽頭・喉頭・声帯・食道・胃・十二指腸カメラ」です)で診断がつくでしょう。 最後に、全ての可能性を考え、聴診所見や身体所見も含めた、色んな検査(CT検査や採血検査、エコー検査)をしていき、鑑別に上がる疾患を一つずつ決していき、残ったものが「最終診断」となるわけです。 経過もみることがあります。

この時期、最も見逃され易く、鑑別に上がることが少ないと思われる疾患が「急性過敏性肺臓炎」です。 通常の肺炎だと、両側の肺に炎症像がでることは稀で、またレントゲンやCT検査で「濃い」色で映ります(もちろん両側にでることもあります) しかし、両方の肺に、「すりガラス」のように淡い影がみられるのが特徴な「非定型肺炎」「間質性肺炎(CTをみると鑑別がある程度できますが)」です。 しかし、春から秋、とくに夏場に多い「急性過敏性肺臓炎」を鑑別にあげないと、患者さんにとっては不利になってしまいます。
私は「放射線科」の目で、CTをみて、間質性肺炎か急性過敏性肺臓炎を、肺の末梢部位(すみっこ)をみて鑑別し、9:1で急性過敏性肺臓炎だが、間質性肺炎の可能性を残し、検査をするという立場をとります。 もちろん、非定型肺炎の可能性も残しながら治療・診断をしていく訳です。
ここで大事なことが2つあります。 1つは、プロ野球の野村元監督も言っているように「先入観は悪」ということ、です。 一発診断やキーワード診断ができてないのに、「ある程度、この疾患だろう」と1-2個の診断に決めつけるのは良くないと自戒の念をこめて診療にあたっています。 2つ目は、鑑別診断に上げる病名をサボる行為です。 徳島大学では、「診断学」の本(英文、慣れてなければ日本語のもの)を皆が買い、症状から、全ての疾患を書き出し、一つずつ除去していくことが内科の仕事でした。
こういうトレーニングをうけていないと、サボるわけでなくても、決めつけ、に走ってしまうことがあるので、私も気をつけて診療に当たっています。
私は、放射線科の目で、CTをみるだけでなく、本職の臨床医として、聴診所見も重要視します。 間質性肺炎なら、それ相応の音がするはずです。 しかしそれがない場合、可能性はかなり少なくなります。 聴診器を当てるだけでは全く意味がありません。 まさに、真ん中にある「脳」を音が素通りしてしまうだけの、形式だけの聴診です。 こういった行為を私はどうかと思いますし、聴診器を当てないなどという行為は、師匠である福田信夫先生(日本で聴診のトップランナー)からお叱りをうけるどころか、破門になってしまいます。 患者さんは、高いお金を出しているので、日本での標準以上の医療をうけたいと思っていると思います。 私が患者ならそう思いますから。 そのため、私はCTの読影技術を学び、開業した訳です。 CTの読影技術が専門でないとしても、内科医として、鑑別診断を書き出す行為は絶対にするべきです。 患者になったときに、「これはなんですか?」と医師に聞く事も大事です。 「まだ経過を見ないと分かりません」と言わせて頂く場合もあるのですが、私は質問に対しては何でもwelcomeです(答えられる範囲で答えさせていただきます)