私は、自身の父親もですが、研修先で指導をうけた、心臓血管外科の金香先生が最も優れたリーダーではないか、と思っています。 現、吹田徳洲会病院の院長です。 金香先生のすべてを知っているわけではありませんが、とりあえず、「心臓リハビリテーション」を私ができるようになったのは金香先生のおかげです。
私が感じていたのは、金香先生は、皆んなにとってできるだけbetterで、時には一人にとってbestな方法(これは皆んなにとってはbetterではなくなるのですが、金香先生を信頼している人からすると、金香先生の気持ちがわかるので不思議です)をとっていたような気がします。 それは金香先生が患者さん思いだったから、だと思います。

患者さんに対しては、私はbestな方法を必ず考えて、話し合いの後、患者さんの意見もきいて、次にbetterなのはなにか、と治療方針を決定します。 患者さんにとってのbestが現代の治療で「最もよい」とされているわけでは決してないこともあるからです。 ただ、医師としてはbestな方法を提示することが大事だと思っています。

自分だったら、と考えながら、他人の立場になったら、と最後に、最も良いのは? と、考えるのが大事だと思います。 これをみんなが実践するのが、働きやすい職場、だと思います。

プロとして働く以上、ある一定以上の能力は必要でしょうが、その能力自体も最初は知識だけで、もしくは知識もない場合もあります。

私のプロの定義は、人に教えることができること、です。

誰も怒られながら教わりたくないし、自分でも丁寧に優しくめんどくさがらずに教えてほしいものです。 「甘え」ではないと思います。 これが「甘え」なのだとしたら、私はそこで働きません。 初めてすることや、人間なのでミスをすることはあるでしょう(医療関係でも命に直結しないミスはありますが、救急の場面などではミスは許されませんので、そういう場合は「強く」叱ること、叱られること、は絶対的に必要です)

人それぞれのスピードや記憶力で、頑張って覚えようと、謙虚な姿勢でするときに、その気持ちをそぐようなことはあってはないと思う次第です。 「前言っただろ」 「何度同じことを言わせるんだ」も、相当変なミスでなければ、言い方ひとつで、だいぶ変わってくるものです。

プロ野球選手などでは、自分の技術を他人に教える事は、いわば「個人事業主」である選手にとって致命的なことがあり、見て盗ませない事も大事かもしれません。 また教えることで、将来「コーチ」として自分を売り込むチャンスと考える選手もいるでしょうし、球団のオーナーはそういうところで「コーチ」として雇うかどうかを決定しているでしょう(コネなどもありそうですが)

さて医療業界において、「じゃあ、私がやっているのを見て、覚えてね」という人がいます。 私はそういう上司は間違っていると思っています。 最低限+役にたつ情報は共有し合うべきだと思います。 ちなみに、私の医療技術についても全てをさらけだすことは、めったにありません。 少しばかりの「コツ」は自分だけのもの、だと思っています、これはどの医者にも言える事だと思っています。
では、どこまで教えるか? それは、一応「全て」です。 自分だけのコツ、は教える必要はないでしょう。 その人の財産でしょうから。 「全て」というのは、患者さんが困らない、という点です。 また教え方も大事です。 叱って教える、などもってのほかで、自分の仕事を止めてでも、相談されたことが大事なことなら親身になって教えるべきでしょう。 大事かどうかは、相手の立場にたつ事が大事です。 私も急いでいるときなどは、イライラしてしまうことがあり、反省することもありますが、怒ったり、立場をわきまえない言動などは、職場の空気を汚す行為でしょう。
医療現場で、能力は抜きん出いても、好き嫌いの激しいことで有名で、「イチロー」(私は大ファンですが)のような選手ばかりだと、クリニックはなりたたない、と客観的に思います。 ちなみに「イチロー」のいた数球団全ては優勝経験が「ゼロ」なのはご存知の方もおられると思います。

RAS阻害薬とACE阻害薬という薬は似ていて、咳という副作用をなくした薬がRAS阻害薬です。 しかし、予後(長生き)に関しては日本で未発外のACE阻害薬のラミプリルが最強です。 英語の論文を直訳すると「高性能ACE阻害薬」と私は訳しています。 これに最も近い薬が、RAS阻害薬でミカルディス、という論文があります。 そのため、私はミカルディスか、腎臓内科の先生が使うことが多い、心臓にも腎臓にも良い影響を与える薬、アバプロの2種類を使うようにしています。 もちろん、他の薬も患者さんのcase by caseで投薬しています。
さて、私は基本、RAS阻害薬の「ディオバン」は基本的に使いません。 理由は、論文の不正があり「ケチ」がついたこと、また、24時間持続しない効果があるためです。 昼間だけ血圧が高い、という場合に使用することが時にあるのですが、今は使用を控えています。
最近、当院にこられた患者様で、糖尿病も悪く、心不全もあり、腎機能も悪い、という患者様がこられ、内服薬を確認すると、「ディオバン」「カルシウム拮抗薬」「ペルサンチン(尿のタンパクを減らす、ということですが、腎機能をよくするという論文はなく、現状「気休め」の薬といってもいいのですが、今後はわかりません。 私は処方は基本的にしない方針です)」がでていて、血糖値も200越え(朝食後ですから、夕食後は300弱と推測されます)、HbA1cも7.2%と相当悪いのですが、食事指導も内服薬も出ていません。 患者さんに聞いた所、ディオバンは効果の時間が少ないので、「カルシウム拮抗薬」でカバーするという説明がされ、心臓の検査はされたことがない、血糖値も「上等です」と言われたそうで、特に「ペルサンチン」で腎機能をよくしましょう、と言われたそうです。 これには疑問点が多々あります。 まず、ディオバンをやめて、腎機能を本気でよくする気概がないように思えました。 腎機能は高血圧、糖尿病、塩分のとりしぎ、などで悪くなるのですが、その治療がされてないため、少しびっくりした次第です。 ディオバンが理由なく処方された場合は、「私が患者なら」その病院・クリニックはかかりつけにはしません。 また尿たんぱくが、多くでているなら、まだしも、腎機能をよくするために、現状「ペルサンチン」を処方する、というのは、証拠がないので、どうかと思う次第です。 「ちくはぐ」な処方で、どうしてそういう薬になったのか疑問を呈さずにはいられません。 今後は私がみていく、ということになり、処方は変更する予定ですが、糖尿病で心不全にもきく薬を投与したところ、心不全も改善されて、患者さんは驚いていましたが、今までがどうかと思う次第で、「通常の」診療を私はしただけなのです。

主に血圧を下げる薬で新しい2種類は、RAS阻害薬とカルシウムチャネルブロッカー(CCB)の2つです。

もっとも新しいRAS阻害薬には、細胞レベルでの、レニン- アンジオテンシン- アルドステロン・システムの亢進を抑えることに加え、腎臓の圧力を下げることで、心臓や腎臓を守ります。

昔、といっても10年も経ってないのですが、ディオバン事件(ディオバンというRAS阻害薬の論文が嘘だった)の前に、直接レニン阻害薬(今は使わない薬になりました、あっというまに世に出て、あっというまに消えて行きました。 私は論文をみてから導入を考えようと思っていたら、糖尿病の方には悪いことをする可能性、などの論文をみて使用を一回もしていません。 結果的に、患者さんの体に悪いものを投与することがありませんでした)、ディオバン、ACE阻害薬(RAS阻害薬の昔の薬ですが、ラミプリルという日本未発売の最強の薬が存在します)、スピロノラクトン(K保持性利尿薬)を「すべて投与しています」と全国の薬剤説明会で発表した開業医の先生がいますが、今はどうなっているのでしょう。 理屈がいくらあっても、その後の臨床のデータをじっくりをみていく方が、私は安全かな、と思っています。

エキセントリックな処方をみかけることがありますが、臨床のデータが豊富でない場合は、独りよがりな処方となると思いますし、最近思うのは、とくに糖尿病で、15年前の処方をみかけることもあり、格言の「自分がみないリスク」というのを思うこともあります。 糖尿病治療が苦手とすら思ってない場合があったり、「これで大丈夫だろう」と思っておられる場合があるのかな、と思う次第です。