これは院長である私の医師として、1回遠回りしたことに起因します。 私が医学部に入った年に、父親が開業しました。 私が卒業し、医局に属さずに京都大一赤十字病院で主に消化器内科を志していた時に、父親から人手不足で、半年だけ帰ってこい、とのことで、実家を手伝っていました。 このとき、周囲の友人達は色んな手技を覚えているのに対し、相当焦ったのを覚えています。 しかしこの遠回りが良かった。 父親ともゆっくり話すことができ、開業医の大変さもしることができ、いずれ自分が開業するならば、と考える事ができました。 多くの開業医の子供が跡を継ぐ事が多いと思いますが、私のように一度帰ってから、そこから医局に入って、自分でセンター長までなり、留学させていただいてまで、実家に再度帰る、そして、開業をする、という経緯をたどる人は、私や私の周囲の医師に聞く限りでもいません。
開業医の気持ちを持って、研修、研鑽したからこそ、一つの臓器だけしかみえない、ということがないのです。
胃カメラ、腹部エコーをしながら糖尿病の管理をする医師はいるでしょう。 しかし、胃カメラ(胃カメラで癌や胆石を除去する手術の経験)や腹部エコー、超音波内視鏡、胃瘻作成をしながら糖尿病の管理をして、心エコーが最も得意とする医師は現在、私だけしか、私は知りません。 周囲に流されず、時には自分のエゴで、自分の医師としてのスキルを磨いてきたからこそ、「これは癌の可能性が高い」「これは間質性肺炎だが、モザイクパターンだから、過敏性肺臓炎が鑑別に入る」「関節の脱臼」などが分かるようになりました。
遠回りしたけれど、その後、人より効率よく、さらに地べたを這いつくばって月当直7回(が普通)以上をこなし、内科と循環器の夜間当番を入れると、ほぼ毎日が電話にでれないと、患者さんが危ない、という状況で仕事をしていました。 そういう医師もたくさんいます。 もっと大変な医師もいると思いますが、遠回りを1回してないので、開業のことまで考えてないので、開業する半年前くらいから違う事をしはじめる人がたまにいるのが相場となります。 開業する同級生が最近多いので、よりそういうことを感じます(そういうのは標榜の詐欺ではありません。 きちんと研鑽してから開業するのですから)
私は「内科」を標榜(看板に掲げること)する以上、何かだけに「特化」した医療をすることは、もはや「内科」ではないと思い、看板を降ろして欲しいと思っています。 「特化」した治療をする医院があっても良いと思いますし(その「特化」した看板自体が怪しい場合もあるのでご注意を)、そのクリニックはそれだけしていれば良いのです。
ただ、私の「内科」の考えと全く正反対です。 当院では「専門性」として、心臓超音波検査をはじめ、連携をとっている「福田心臓・消化器内科」でも高知市で初めて「外来心リハ」をはじめたパイオニアです。 香川県の最終拠点病院で、心臓リハビリテーション長を務めたものを、高知に持ち帰った、という経緯です。 内科である以上、「基本」の腹部エコーは当然ですし、胃カメラも当然、癌の見逃しがないように研鑽していました。
わざわざ、「これが専門です」という内科は、その専門も怪しく(私からしたら)、循環器内科といっても、心臓超音波が稚拙であれば、もはや循環器内科でもありません。 ただの「○○(名前や地名)クリニック」として、標榜には、内科をとりあえず外して欲しいと思います(なんなら、なんちゃって内科、とでもして欲しいと思います) これは、患者さんを騙す行為なので、私が医療関係者なので分かる事なのですが、一般の人は、看板をみて「あー、ここは○○が専門なんだ。なら循環器もすごいに違いない」と勘違いすることに危惧しています。 私が患者だとしたら、「ここだけは行きたくない。かかりつけ医にしてしまったらおしまいだ」というクリニックがあることが事実なので、恐ろしいことだと思います。 命を預けるのです。 かかりつけ医は慎重に選んで欲しいと思います。 「近い」という理由以外でも。 また嘘の専門に騙されない賢い患者になって欲しいと思います。
取り敢えずどんな患者さんも断ることがゆるされない最終拠点病院で、難しいカテーテル治療や、緊急の心筋梗塞例で心臓マッサージしながら蘇生できた例で社会復帰もできた例(心肺停止でこられた場合、1/100が助かるも社会復帰は難しく、1/000の確率で社会復帰できる、という報告があります)の主治医だったこともあります。
そんななか、胃カメラ、腹部エコーは必ずしていました。 甲状腺のエコーと組織検査、血液内科の診断のための骨髄穿刺、髄膜炎の検査のための髄液穿刺、気管支鏡(をしている循環器内科医を今まで私はしりません)、心臓外科の手術でフォガッティの手術(手伝ってもらってですが)、ひざ関節内注射、あげればきりがありませんが、開業したときに、かかってくださった患者さんが他のクリニックにかかるよりも良かった、と言ってもらう方が、私も、職員も、嬉しいと思って辛い時もありましたが、治療に当たっていました。
高知県内で、胃カメラ、腹部エコー、心エコーを高レベルで試行できる医師は、父親以外にまだ会ったことがありません。 必ず、「できるけども、腹部エコーはちょっと苦手で動脈だけなら」などかもしれません。 私が知らないだけかもしれませんが。 実は私は胃瘻も作成できるし、大腸カメラもできますが、開業医となってからはしない、と決めて、途中で修行を、放射線科の読影に時間をつぎ込みました。 他の医師が、問題ない、と言っても、「これは腎癌では?」と疑えるし、肺がんでしょう、と言っていても「絶対にとは言えないが、どう見ても炎症疾患で、肺がんの検査をするリスクが高いので、3ヶ月のフォロー」と言えるようになっています。
なので、当院で出来ないことは、大腸カメラ、乳がん検査、子宮頸がん検査、髄液検査だけ、だと思っています。 もっともそういうことをしなければならない場合は紹介するわけですが、私が大嫌いなのは、自分ではなにもできず、紹介状を乱発する、やぶ医者です。 あとは、したこともないのに専門(漢方、心リハ)を語る嘘つき医師です。 患者さんにはわからないことなので、恐ろしいな、と思います。 自分が医療関係者で医師だからこそわかることなのですが、おおっぴらに言えないのが、この世界の仁義でもあります。
当初は座学だけで、セミナーに行きまくったり、学会に行ったり、機械販売店の話を聞いたり、香川では研究会がなかったので、愛媛の研究会に行ったりしながら、四国こどもとおとなの医療センターで開設を入院・外来でしました。 運よく心リハ経験者の方を無料で週に1回来てくれることもあり、非常に助かりました。 心リハには、実は整形外科の知識が絶対に必要ですし、整形外科医にチームに入ってもらい、非常に有意義な心リハをすることができていました。 また、離床といって、「ベッドからお尻が離れる」ところ、つまり急性期の患者さんにマンツーマンで心リハをしていたので、著書である「恋する心エコー」の中の「心臓リハビリテーション」の章では、慢性期でも非常に状態が悪い方に対する心リハの仕方、を執筆することができるレベルにありました。
さて、人生半分くらい生きてくると、子供や20歳くらいの若者に、「こうしたら良かったよ」と言うことができます。 これが経験というものです。 失敗から学ぶことは多くあります。 成功から学ぶこともありますが、成功するためには、準備を万全にすることから始まるので、逆に成功しなかった場合が「おかしい」「何がわるかったのだろう」と勉強になるわけです。
私の知り合いのドクターで、一緒に働いていましたが、漢方薬など使ったこともない人が、開業時に「漢方科」を標榜していました。 これは正直、患者さんを騙す行為になるのでは? と私は思います。 心臓リハビリもそうで、漢方や心リハのセミナーは月に何度もあり、それを聞けばある程度というか、結構理解できて、開業もできるレベルになるのだと思いますし、勉強して続けていれば経験も増えてくるので、専門となるかもしれません。 ただし、カテーテル治療などと違い、慢性期の落ち着いている人なら、害になることが少ないから、ということがあるからです。 しかし急性期の治療(これは漢方も心リハもです)の経験がない場合、いくら落ち着いている患者さんに対しても、「このサインは悪くなる傾向」という経験がないので、見逃しがあるのでは? そういった場合、悪くなった時にどうしているのだろう、と思います。 なので、学会でも、きちんと責任をもって最低2年の経験をしないと、標榜は自由なので取り締まれないけども、できるだけ避けてください、という注意喚起がなされているのです。
これは、私が研修医で京都赤十字病院の糖尿病科で研修をしているときに、上級医から教わったことであり、実際に外来で外食が多い人にそういった説明をしていました。
あれから大分たちます。 デフレなどもあり、外食産業も変わってきていますので、上記が全て正しいとは思いませんが、「だいたいあっているな」と今でも感じています。
当院では、常勤の管理栄養士の栄養指導がきけますが、「忙しくて」という人に限って外食が多いものです。
そういった方には、「払った金額がだいたいのカロリーなので、○○円までに1日した方がいいですね」
ということもしています。
医師の外来のテクニックですね。 詳しく言うよりも、的を得ているし、金額と同時に「本当かな?」とカロリーも患者さんは気にして表示をみることになる、ということです。