私は京都第一赤十字病院や、徳島大学病院、現:四国こどもとおとなの医療センターで勤務していました。 医療センターでは、エコーのチェッカー、心臓リハビリのセンター長を務めていました。 その病院で私しかできない手技がありました。 そういった医師が開業するのです(なかには、違う場合もあります)
実は、最終拠点病院としての位置付けの、医療センターや日赤は、悪くなった人や、早期がんの治療などを診ています。 強い薬や、侵襲的な治療を行うところです。 では町医者は何をしているか。 私は、最終防衛としての機能が大事だと思っています。 大きな病院では同じ科にかかるだけで、心臓なら心臓だけのことしかみないことが多いのです。 開業医(町医者)では、患者さんの全身を診ないといけません。 認知症しかり、血圧、糖尿病、がんの早期発見など、本当に全てです。 それらを見逃さないようにして、疑わしければ、大きな病院の一つの科に紹介するというのが大事です。

サッカーで例えると、ディフェンダー(守りの要)が町医者で、フォワード(攻めの治療)をするのが大病院です。

当院では、多岐にわたる検査を「本当の意味での内科」として、しています。 検査を嫌がる人もいますので、もちろんその方の考え方にそった治療をさせてもらいますが、「こういったことが重要」という話はさせてもらいます。 あとあと、その患者さんが後悔しないためにも。

他院でインフルエンザではない、と、迅速キットで判定された方がこられました。 「普段は38度もでないのに」と。

そう、この時期38度の熱で胸部の聴診で問題なければ10中8,9はインフルエンザを強く疑わなければならないでしょう。

そうされなかったのは、おそらくキットの盲信者、周囲にインフルエンザの方がいなかった、関節痛などがない、などでしょうね。 私自身、2011年の北海道の開業医の先生が論文化するまえから、咽頭所見で見分けはつく、と思っていたので、2016年の論文では、インフルエンザキットは時期などを考えなければ当たる可能性は6-7割。 ただし、血液検査で1週間後に正しく検査したときの、インフルイクラ(咽頭のリンパ濾胞)の所見は95%当たる、という論文もありました。

今まで見慣れてない医師(海外の医師はみないでしょう)や、このことを知らない医師も、インフルエンザの方を、普通の感冒や細菌性咽頭炎として、出してはいけない「ロキソニン」を処方してしまうことが恐ろしい。

正しく咽頭をみるコツもあり、「あー」と声をださせるのはナンセンスで、息を吸ってもらうのが、喉頭蓋が上がるため、解剖学的に見やすい、のと、LEDのライトでみることが大事(これは論文でも明記されています)です。

私は、この所見を15年以上みてきたので(LEDライトでない時期もありましたが)、迅速キットは基本使わないと保険医療が通らない場合があるし、説得力があるので使いますが、必要ない場合もあるほど、この所見は大事です。

今後はさらに日本でも使わない方向になるでしょう。 その理由としては、日本ではウイルス性の感冒に細菌を殺す抗生物質はデメリットが大きいからです。 さらに、耐性化の問題です。 以前私は、一宮地区に住んでいる65歳以上の方の肺炎球菌に対する耐性ができている薬を解析しました。 クラリス、ジスロマック、クラビットです。 裏事情として、今までは製薬会社も抗生物質をたくさん作って来ましたが、血圧の薬のように1ヶ月分が使われることはないので、あまり作りたくないということもあり、現状の薬で、今も未来もやっていかなくてはいかないというのもあります。

さて、クラビットはキノロン系の薬とされています。 この薬は将来的な血管の障害を起こす可能性が示唆されています。 そのため今後はマクロライド系の薬が増えるのではないか、と思います。 クラリスとジスロマックです。 しかし、一宮に住む65歳以上の8割以上は耐性を持ってしまっています。 すでに今まで安易に使われてしまった「ツケ」がここにきて出てきてしまっているのです。 ちなみに、マクロライド系の薬も不整脈死という有名になった報告があり、一時期医師みんなが使用を控えた時期もありましたが、今はそんなことにはなっていないのも不思議の一つです。

今までの文章で、私は抗生剤がウイルス性の感冒に意味がない、とは一言も書いていません。 実は人によっては約1/5000-1/50の確率で肺炎への移行を予防するので、意味がないわけではないのです。 専門家も意味がないとは言い切れないはずです。 ただ、1/5000だとその確率が少ないので、意味がない、という発言をする方もいるかもしれません。

要はメリット・デメリットを考え、抗生剤を投薬するかどうか、内服するかどうかを決めなくてはいけません。 抗生剤絶対に使わないといけない場合もあります。 そういったときに、メリットが大きく、デメリットが小さい薬を選択し、患者さん側としては、忘れずに飲むことでキチンと細菌をやっつけないと耐性ができやすくなってしまいます。

あと最も大事なのは、経過をみることです。 どんなに優秀な専門医でも、その日の発熱(インフルエンザが流行っている今のような時期は別として)で、ウイルス性か細菌性かを見分けるのはかなり難しいはずですし、分かる、という人はおそらくいないでしょう。 そのため私は、抗生剤を出さない処方、また抗生剤をだした場合でも必ず、3日目(4日目という専門医もいる)に、状態が悪くなっていれば再診してもらうように必ず声かけをしています。 このことが一番重要なのではないかと思います。

年齢が若く、合併症がない人には、ウイルスが増殖するのを防ぐ薬をださず、「葛根湯」だけを出す医師もいるそうです。 それなら、病院にいく意味がない人がいますね。 最初から、ホームページや外来に「○歳から○歳で、心臓、肺の病気、また下記などの病気がない方は葛根湯だけの処方となります」と書いておかないと、患者さんはびっくりするんじゃないかな? と思います。

1-1.5日症状をタミフルは短くした、という論文と、タミフルで下痢などの症状がでる確率を検討した結果、個人的な処方、だということにびっくりしました。 その病院内での統一性がないと余計に混乱に陥るのでは?
1.5日症状が短くなるとは相当本人にとっては楽になると思いますが、医療で人を傷つけない、という信念なのでしょうか?
いろんな医師がいますね。

上記は全てしていました。 ただ気管支鏡だけは、誤嚥性肺炎の吸痰(これをしないと絶対に治りません)や、挿管(口から気管に管を入れること)困難例においてのみしていました。 管を気管支鏡につけてすると絶対に入るので。
血液疾患も診ていたし、髄膜炎の可能性がある子供さんや大人にたいして、髄液を針で刺して採取していました。 心膜穿刺は論文も書いたほどですが(どういう場合にすると危険でその対処方法)、心臓内科医ならできなくてはいけません。 循環器だけでなく、内科をしていたので、必要にせまられて、もちろん専門でかつ上手な人に最初は教えてもらいながら、危険なことにならないように、一人でできるようにコツ(エッセンス)を掴むと、今度は私に依頼が来るので、かなりの症例をこなしました。 ひざ関節注射もそうです。 心不全になると、偽痛風といって治療の途中で膝が腫れますので、関節液を整形外科医に頼んで、それを病理医にみてもらうのですが、自分でしたいので、習い、習得し、偏光顕微鏡で偽痛風を診断していました。
自分のテリトリーだけに固執せず、他科のテリトリーに浸出することで、治療の幅が広がりました。 その代わり教えてくれる外科の先生のために、循環動態をみるため手術に付き合ったり、術後の心不全や間質性肺炎などを共診で私が担当していました。
救急病院では何でもできないと駄目だと思っていました、もちろん、自分が対処できない場合は力をあわせて患者さんを診ていました。 今日の担当は循環器内科医なので、腹痛や頭痛はみれません、は許されない最終拠点病院でしたし、開業するのは分かっていたので、開業後にはしないことでもしておかないと、それも上手にできるレベル(一回だけ、後ろもらいながらした、は見学で医学生レベルなので、経験したとは言えません)でないと、循環器のみのクリニックになります。 治療はおそらくこういうことをされる可能性があります、と言って紹介するのと、検査や治療は専門ではないので分かりませんがとりあえず紹介します、では患者さんが不安になりますよね? 私にとってはそれが当然であり、もちろん、特化したものとしては心臓の超音波検査(やカテーテル検査・ステント治療)に軸を置き、その病院で最も救急も含め最もレベルが高い一人になることは意識していました。 器用貧乏は嫌だったからです。