当院では、不必要な検査は一切しません。 「きっちりと」その方の状態を診るために、聴診器だけの診察、自宅の血圧の管理だけでは、不十分なことが、分かっているからです。 患者さまの意向で検査をしたくない方にはもちろんしません。 ただ、心臓の治療をおえて、当院で診させていただいている方に関して、3月、7月に私の発表で、実に20%弱の方が、早期の癌がみつかることが判明しています。
検査の頻度は、患っている病気によって変わってきます。 癌について考えると、米国などでは「肺がん」はCT検査が主体になりつつあります。 これは早期で見つかっても生存率が他の癌よりも低いからです。 喫煙、糖尿病などの方は年に1回は胸部レントゲンを、加えて、血圧や心不全で心拡大が言われおられる方は、肺がん検診もかねて年に1−2回が望ましいでしょう。 胃がんに対しては、私は未だエビデンスがない「ABC検診」に対しては否定的な立場です。 ピロリ菌除菌後や、ピロリ菌が住めないような腸の粘膜に置き換わっている方、慢性胃炎がひどい方は、毎年胃カメラをうけることが望ましいでしょう、早期でみつけるほど、予後がいいからです。 症状のない方でも、2年に1回の検査を国は推奨しているからです。 理由は、日本人に胃がんが多いことと、上記で述べた早期でみつける有用性です。 大腸の検査はどうでしょうか? 大便の検査は完璧な検査ではありません。 大腸のバリウム(実はバリウムではないのですが)はなくなりますので、大腸カメラか、県内では福田心臓・消化器内科でうけられる大腸CT検査を、「一度はする」のもいいかもしれません。 もちろん、大便の検査で引っかかった場合は必ずした方がいいでしょう。 そのときの所見にて、毎年がいいのか、2−3年でいいのか、5年後でいいのか。 年齢によっても変わってくると思います。
70歳や80歳の方が、「胃カメラなんかしなくていいよ、どうせ何か悪いものが見つかっても、なにもしかいから」とおっしゃっているのを聞いて、少し寂しい気分になりました。 私はその方の身内ではありません。 検査もただではありません(胃カメラだけなら3000円弱ですが、高いととるか、安いととるかはその人しかわかりません) 検査に対するしんどい思い、などもあるでしょう。 なので、「私はお腹のエコーはしてもいいけど、胃カメラはしない」という方には胃カメラはもちろんしません。 無理にして良いことは一切ありません。 ただ、「周りの人の意見を聞いたりして、思いが変わったら言ってください」と言っています。 70歳、80歳は若い! と思っています。
私の母方の祖母をはじめ、多くの方が、胃がん検診をうけずに、胃がんが転移して、苦しい思いをしている方の紹介を、香川の医療センターで、内科医として、苦しみをとるような緩和治療をしていました。 若い女性で腹部エコーがされておらず、紹介されてきて、膵癌の末期だったこともあります。 膵癌は難しいこともありますが、胃がんに関しては、5年前に胃カメラをして、危なそう、と判断されており、毎年検査をしていれば、こんなことにはならなかっただろう、と思いながら大病院で勤務していました。 ピロリ菌がいなくても2年に1回は推奨されている胃がん検診です。
血圧とコレステロールだけ、を当院では治療して、その他は検診かってにやっておいて、がモットーではありません。 早期でみつかる癌に関して、女性の乳がん、子宮頸がん以外は当院でみることができます。 大病院で働いていて、本人も苦しまず、ご家族も悔いがのこらないように、検査が必要なことがあることを、ぜひ知って欲しいと思う次第です。
最後に、聴診器で問題なくても心電図では大問題になっている、ことが多々あります。 循環器専門医であれば当然のことです。 必要な方には年に1回ではなく、2回検査をした方がいいことがあることは事実です。 しない場合は、患者さんは「不必要な検査をされた」ではなく、「されなくて医師の怠慢ではないか」と思うくらいの重要性があるのです。