当院では約3日間(できれば連続)で来院していただき、入院することなく、外来にて糖尿病患者さんに対して、インスリンの打ち方、血糖値の測定方法などを指導しています。
既存の内服薬は、膵臓に負担をかけるものや、新しいものは負担をかけないものもあるのですが、それでもやはり血糖をさげるのには膵臓のだすインスリンに頼ってしまう薬です。 金額的にはたくさんの最新の治療薬を内服するより、インスリン治療に切り替えたほうが安くすむでしょう。
金額的なことも重要ですが、内服薬で治療しても、体が(脳が)血糖値を下げないでいい、と思ってしまっていたり(糖毒性、と言います)、薬が効かなくなってしまっていたり(2次無効、と言います)するため、外部から助けが必要になってくるわけです。 高血糖がつづくと体が酸性になったり、脱水症状で昏睡を起こすことがあり、脳にダメージがくるため危険です。
インスリン治療で最も気をつけているのは、「低血糖症状」です。 実は高血糖よりも、低血糖の方が怖いのです。 そこで私は、外来で導入するときは基本的に、超遅効型というインスリン製剤を用い、最低限のインスリンの量から打ってもらう練習をします。 すでに、半年間のインスリン治療で、膵臓の働きがもどり、内服薬も少なく開始でき、インスリンは中止できた人も数名います。
インスリン治療と言われたら一生? 答えは、ズバッと言えないのですが、一生の人は元々インスリンが必要とされている人が決まっていることがある場合(抗GAD抗体、という検査をして陽性なら一生です)、またインスリン治療が遅れてしまい膵臓の負担が強まってしまった場合に、膵臓を休ませても回復しない場合の2通りが一生です。 他の場合は、インスリン治療を中断できる場合もありますが、その方の食事や腎臓の機能などを考え、内服薬に拘らないほうが良い場合もあり、説明することもあります。
循環器クリニックで外来インスリン導入をしている診療所は非常に少ないと思います。 医師の心理で慣れないインスリンを使いたくない、というのと、患者さんにインスリンを打たせてしまって申し訳ない、という気持ちがあるのかもしれません。 ただ、機を逸すると、逆に一生インスリンが必要になることを患者さんは知っておかなくてはいけません。
私の中で、インスリン治療を専門のクリニックや大病院の専門家に任せることは、妊婦さんの場合、またインスリン製剤に抗体をもってしまい、ステロイド治療が必要な場合です。
なぜ外来でインスリン導入をしているのか? この答えはシンプルで、インスリン導入ができない診療所だと、どうしても糖尿病の治療が一手も二手も遅れてしまい、患者さんが被害を被るから、です。