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「医療崩壊」には2種類ある

現在使われている「医療崩壊」は、コロナウイルス によるものを指すことがほとんどです。 TVなどでもよく使われる言葉なので皆さんも「医療崩壊=コロナウイルス により、医療現場の疲労困憊」と認識されていると思います。
ただ医師(といっても経験したことのない医師もたくさんいると思いますが、、、)の間では、「医療崩壊は10年以上前から存在していた」が常識です。

どういった「医療崩壊」かというと、大野病院の産婦人科医の刑事告訴事件、加古川心筋梗塞事件、杏林割り箸事件などが引き金にもなり、また「断らない地域の中核病院」での医師数減少や科そのものがなくなる、というなかで「当直業務」が増え、医師の体力的・精神的疲労が重なり悪循環になるものです。

私が勤務していた「京都第一日赤」では救急車を断る、また普通に酔っ払いが来て「点滴しろ!」などを断る、などということは誰の頭にもありませんでした。 それらすべてをみて医療なのだろうと私も認識していました。 その後、徳島大学病院でも同様でしたが、国立病院機構善通寺病院(現:四国こどもとおとなの医療センター)でも断るという行為が許されない、中讃(香川県は東西に伸びているので、真ん中を中讃といいます)の最終拠点病院では私が就任前は血液内科がないのに「急性白血病」を診ていたそうです。 私と私の前に香川大学から赴任されていた血液内科を少し知っている(治療はできない)医師に入院を診ない偉い先生から入院を担当するように言われたところ、香川大学の医師が「クリーンルームがない状態でアンディ・フグ選手がなった急性白血病を診て良いわけがない」と直談判(私も同席していました)し、血液内科がある病院へと搬送されました。 以後、急性白血病は診断がついた時点で紹介する、となりました。
また当直業務とは「入院患者の見回りであり、外来業務はないこと」とされていますが、形骸化された言葉です。 医師は当直をするときに「さて、今日は寝れないな、、、」で普通に朝から夕方まで通常業務をこなした後、夕方から次の日の朝まで救急車の対応、普通に風邪などでやってくる患者さんの対応をし、その次の日も「休み」と書かれた勤務表のときに通常業務をしています。さらに言うなら当直によって入院患者さんが増えるので次の日の方が忙しいのです。これは医師だけで、他の医療関係者は当直ではなく、夜勤、となり、昼間は休日で、次の日も休日となります。 そういった環境ばかりで医療をしてきました。
今一度、医療崩壊、は2つあることを知っておいて欲しいと思います。 高知県でも医師数不足などで日常的に以前からある医療崩壊が存在し、大病院などの医師は過酷な環境で業務しているのです。 ちなみに中規模病院で働いていると当直は「寝当直」で、重症の入院患者さんはいないし、救急車からも電話すらかかってきません。 そういった病院で研鑽していても医療の技術という面では全く意味がなかっただろうな、と思います。 私は周囲の医師に助けられ、教えられ、自分で出来ることも多くなったため、今まで一緒に働いて来た医師に感謝しています。