これには3つの理由があります。1つ目は、利尿剤を夏に向けて減らした場合などに、心不全にならないか、をチェックするためです(または心不全治療を外来でしているときに、治療がうまくいっているかをみるには心エコー検査が必須だからです) 自分で治療をしていて、患者さんにも説明しやすいし、心エコー検査は決して安い検査ではない(米国では超音波専門医(私もです)がとるエコーは10万円で、それ以外の医師・技師がとる心エコーは1万円、と相当差がありますが、日本では技量が違っても一律です。1割負担の肩は880円ですが、3割負担の方には1週間後の治療経過をみるにはやや高い、と思っています)ということです。
もう一つは、大きな病院に紹介した後は、その大きな病院が3-6ヶ月毎に何かしらの検査をするために通う必要が患者さんにあり、その中に心エコー検査があると、実際に治療・投薬している私ども町医者としては治療がしにくい、ということがあります。 非常に言いにくいことですが、高知市内ではそういったことが多いと感じています。 香川の四国子供と大人の医療センターに勤めていたときは、カテーテル治療で入院中と、9ヶ月後の確認のカテーテル入院時にして、開業医の先生に治療を任せていました。 もちろんこれが全て良い、というわけではありません。 例えば非専門医、例えば消化器内科の開業医先生からの紹介で、心不全で入院となった後、治療が終わり患者さんをお任せする場合、再入院率が非常に高い(こういう風に採血、レントゲンで少しでも異常があればすぐ紹介を、としても、です)と感じており、その場しのぎの治療をする開業医の先生に関しては、半年に1回は医療センターに来てもらいチェックをさせていただくようにしていました(こちらからのアドバイスをあまり重要視せず、ずっと同じ薬を処方する場合などです)
最後は、大きな病院では分業制が当たり前になっており、毎回違う技師が心エコー検査をして、医師はそのレポートを見るだけ、ということがあるためです。 私は自分で患者さんの心臓の動き(難しい言葉でいうと、血行動態)をみるのと、又聞きの他院のレポート結果で治療するのは少し違和感を感じます。 もちろん、大病院での専門の医師や凄腕の技師がエコーすることによって、私だけが心エコーをみるのではなく、ダブルチェックの意味も大きいと思います。 ただ患者さんからしたら、その検査は○○病院ですることになっているし、この前した(紹介状でも、次回心エコー予定です、などがあります)などがあり、無料でしている、ということも理由の一つです。
紹介状で「次回は3ヶ月後採血と心電図です」という治療してもらって、2年以上(あるいは4年以上)安定しているにもよらず、3ヶ月(6ヶ月もあります)毎に、そういった検査をする意義があるのが疑問に思う患者さんがいることは事実です。 結果は問題ありませんでした、ということが「ほぼ」なのですが、骨粗鬆症があるかたの場合、アルブミンだけでなく、カルシウム値が必要だったり、甲状腺の治療中の場合、その項目が抜けていたりするので患者さんは再度検査をすることになります。
ペースメーカーのチェックに関しては、挿入した責任もあり(私もそうでした)、また安定化しない場合もあるため、しばらくは自施設でチェックするのは当然だと思いますが、特殊な除細動付きのペースメーカーでなければ(そうであっても)安定してくれば開業医でのチェックでも全くすることは変わりません。 もちろん、施設ごとの決まりごとはあると思いますし、それを全面否定するつもりなどありませんし、患者さんがが大きな病院と関わりをもっておきたい、という気持ちは非常に分かります。
ただ、心電図だけ、に半年に1回大病院にかかるのは、正直意味がないことが多いということもあります。 85歳の患者さんが、1日かけて心電図だけのために病院に行くのは、医療費の無駄であり、「しんどい」という声も聞かれますが、大病院に言われると行かなくてはいけない、という気持ちになります。 しかし医療関係者からするとその心電図の目的は? という疑問も残る場合もあります。
紹介後、ある程度の期間を過ぎたら、疾患にもよりますが、こういったことに注意して、前兆があれば紹介してください、というシステムが良い場合もあると思う次第です。
ちなみに、高知市内の事情はわかりませんが、善通寺病院(源:四国こどもとおとなの医療センター)では、私が赴任したときは、「当院の地域での役割は救急外来であるため、安定している患者さんは地域の開業医に任せるように紹介を」という医局会での院長や事務方の意見だったのですが(当時はペースメーカー外来はまだ大病院か、植え込みをした施設でしかできない状態でした)、経営はうまく行っていましたが、5年後には「安定している患者さんでもより「こども病院との正式な合併をするために」経営状況を考えて、紹介は極力しないように、という医局会のはなしがありましたが、それを守っている医師は私の知る限り、ごく一部の幹部のみだったと思います。 私は前医長が開業したので、その先生なら安心できる、ということで、また今までの通り、開業医の先生に救急できた患者さんが安定したら紹介をしていました(はっきり言うと病院の方針に逆らっていました) しかし、どんどん紹介や、とつぜんくる初患の方を誰がみるのでしょう? と思っていたのでそうしていました。 そのため、他科で見えない人も「内科」として、「循環器内科」の外来で待たせずに見るようにすることができ、「腹痛」の方が動脈解離というすぐに手術が必要な場合があったりした経緯があります。
こういったことを書く、言う、町医者はいないと思います。 苦言ではなく、良い面も非常にあると思います。 ただ、「心電図だけ」で「問題なしで、また3ヶ月後に採血です」ということなら、半年毎に心電図と採血(持病を考えての項目をいれてもらう必要があると思います)でもいいのではないでしょうか?