通常の診療時に特定健診を組み込んでも良いようにしてますよ、というのは、親切なのか不親切なのか?
当院では、健診と治療は別物だと考え、事情がある場合を除き、特定健診は診療日とは違う日に来てもらうようにしてもらっています。 どうしても仕事の都合上、この日しかこれないし、採血をするなら特定健診を使いたい、という方には健診と診療を同時に行なっています。
国と県に問い合わせてみたところ、どちらも「健診と治療や診療はでる結果や指導内容が大きく違う、大きく性質の違うもの。 としか現時点ではお答えできません。 同時にすることについては決まりごとがないのが実情ですが、性質は違います、とだけ説明させていただいています。 この質問は非常に多いものです」
とのことでした。
例えば、糖尿病の方の尿検査で大事なのは糖ではありません。 大事なのは蛋白と、治療中ならケトン体です。 低血糖ならケトン体が陽性となりますが、特定健診では、糖と蛋白がプラスかマイナスかしかでません。
肝臓や胆嚢の治療中のかたは、ビリルビンも尿検査や血液検査が大事ですが、どちらも特定健診のなかには入っていません。 社会保険の方は尿酸と腎機能を特定健診で検査することができません。 年齢によらず、です。 HbA1cという糖尿病の検査ですが、貧血があれば過小評価して「良く」結果がでてしまいます。 しかし貧血かどうかは特定健診ではわかりません。
お金の損得の問題も重要だと思います。 その点では、法律上問題ないといっても、損をするのは手間だけです。 なので時間がおしい、という以外は患者さんに特定健診と通常診療を同時にうけるメリットがありません。 たとえば、HbA1cは保険では1ヶ月に1回しか測れませんが、安定した糖尿病の方であれば、例えば1ヶ月の診察の途中に年一回、無料の特定健診をするだけで、次の診察の時の糖尿に関する検査や判断料は必要なくなります。 法律上は現在は問題ない、という見解のようですが、今後は不明です。 特か損かを金銭面でいうと、通常診療時に、追加の採血(ときに尿検査)をするのなら、採血の差額代で1割負担の方でおよそ450円その日の診察(健診を含む治療ということです)が得、といえなくもありませんが、本当にドクターが知りたい内容がそこに全て含まれるかどうかは、全くの別問題ということです。
どちらが正しい、間違っている、は現時点ではありません。 ただ、全くの別物であること、また採血・採尿検査で、体の管理を特定健診でしていくのは貧血、腎臓や尿酸のことを考えると、その人にとって不利益である場合がある、ということを知っておいて欲しいと思います。 そのため当院では原則、健診と治療は別物である、という基本に沿ったスタイルを現時点では推奨しています。