近い将来、「心不全」という、心臓の機能が悪くなる患者さんが多くなりすぎる、という医療業界だけでなく、今後(今も?)はTVでも発信されるはずの用語です。 心不全は「だんだん」と悪くなる最中に「突然、急変する」病気です。 ステージがあり、微細な心臓の障害を「A」とされますが、このAの段階で治療を開始し、Bに進ませない、のが治療の基本です。 これは知っておいて欲しい知識です。 Bになってしまうと予後、つまり長生きや、入院を繰り返す体になってしまうからです。
さて、私は心エコー検査で、stage A だと思った症例を、違う目で見てらおうと紹介する例があるのですが、中には理由もなく、「問題ないので」と1年後紹介先で経過観察をする、ということがあり、少し困惑したこともあります。 また、「全く問題ないですよ」という返事に対して、このままでは患者さんが(俗っぽい言い方ですが)ヤバいと思い、違う病院で心臓CT検査をしたら、「拡張型心筋症で、原因は(私の紹介どおり)左室緻密化障害です」(実はCTでは診断基準がなく、エコーでするものなのですが、CTの方がよく分かる場合があるのです)
そういった方に投薬をして半年、心機能が改善していました。 これは私にとって、もちろん患者さんにとっても、嬉しいことです。 寿命が伸びた、と言っても過言ではないでしょう。 それにしても、明確な理由を述べて「処方なし」なら良いのですが、明らかにstage Aと分かっていながら、投薬なしで、「悪くなったら投薬開始」、「悪くならなければ、また経過観察」というのは、良くないでしょう。 投薬の結果で良くなるかどうかを、せめて半年後に経過観察すべきです。 「悪くなってから」では遅いからです。
たくさんのそういった症例をみてきました。 心機能が悪くなるには何か原因があるのが普通で、ないならないで、遺伝の因子も考えなくてはいけません。 大きな病院では心臓CTや心臓MRIなどができるので、原因を追求できるのです。 それが「病診連携」だと思います。
実地の重症例などを責任をもって治療したり、外来でも開業医からの僅かな心機能障害の紹介をうけていたものとしては、病院で出来る精査をして投薬で半年後経過観察をして(もしくは紹介元が心エコー専門ならまかせて)、その後は紹介もとのクリニックで経過観察をしていた時代があり、いくら大病院で、熱心に情熱をもって治療していたとしても、原則を教わる時期が終わってしまった、もしくは昔はそうしていた、では、紹介しても患者様に迷惑がかかります。 私が大病院にいたときはは、紹介をうけたら、原因をできるだけ精査して、クリニックに返事を書いて、何かあったら再度紹介してください、とするように常々教えられてきました。 それが、今のクリニックでいきていると思いながら、よくなった患者様をみて、患者様も安心、私も安心している次第です。