大晦日の「笑ってはいけない」シリーズ。 非常に面白いと思います。 ただ、医師としては数年前に「笑えない」作品がありました。
山崎邦正さんが、恐らく「大腸憩室炎」から腸が破れ「腹膜炎」になった状態で、収録をおこなわされていたことです。 食事をとる訳にもいかず、点滴のみで栄養と水分をとって、絶対安静の状態で腸に血流をいかせないと、敗血症で死に至ることもありえます。 プロ根性で邦正さんは、それすらも「笑い」にかえていたようですが(周囲は病気の重大さを分かっていないか、分かっていたら罪は重いと思います)、私からすれば、それはプロ根性というよりも自殺行為です。
だいたい、腸が穿孔(破れる)する場所は決まっていて、ほとんどが十二指腸が潰瘍になって穿孔して腹膜炎になって、開腹手術が必要になります。 救急外来をしていて、お腹を痛がる人や、お腹を硬く触れる人のレントゲンで「free aer」という、見えてはいけない腸の外のガス、が映れば、主に、十二指腸潰瘍の穿孔、大腸憩室炎の穿孔、大腸がんの部分で圧が高まり穿孔、の3つを疑います。 一流のCT読影術を持っていれば、どの部分か、さらに造影剤を使用すれば、腸の壊死があるかどうかも分かります。 これらの腹膜炎で、いくら症状が軽くても外来でみていく、ということをしたことがありません。 入院することで、本人の「病気の重大さ、危険さ」を知ってもらうこと、「入院すると安静を余儀なくされるので、動いて筋肉に血液がいく必要がなくなり、腸に栄養・お薬がまわるから」です。 さらに、食事の管理(当初は絶食)なども徹底でき、最悪、死亡の確率をグンと下げることが出来ます。 医療は確率の技術です。 少しでも良い選択を患者様に施す、促すことが重要だと私は考えます。 もちろん、その方の意向もありますので、ラッキーなことに、十二指腸潰瘍が偶然見つかったりした場合には、生活の見直しも含めて入院治療が原則です。 胃潰瘍は外来でも治せますが、十二指腸潰瘍は出来れば入院が望ましい。 その理由は胃の粘膜は1cmありますが、十二指腸は「モツ」を食べたことがある方はわかると思いますが、非常に薄いからです。 それでも「入院以外で治療したい」ということを言ってくだされば、それにそった治療を行います。 その方の仕事などもあると思います、必ず私は確率の話をした上で、入院できるかどうかを、聞いています。 「入院した方が良いかどうか」を聞かれれば、医療は確率論ですから、「入院が望ましい」と言う訳です。