その他の疾患

脱腸について(超優秀な外科医とのやりとりの話)

臍(へそ)や鼠蹊部(足の付け根のお腹)は筋肉が薄く、成人してからも腸が飛び出してくる場合があります。 飛び出すことを「ヘルニア」と言います。 最近はインターネットでも簡単にだれもが、どのように治療したら良いか、が見れるように外科の学会がPDFをだしているほどです。 さて、推奨度ですが、誰でも脱腸になれば、「推奨度A」です。 90歳でも元気ならした方がいいです、ということです。 全身麻酔をかけるので、心機能や肺機能に問題がなければ、外科では研修医が最初にする手術(もちろん患者さんの同意をえて、上手な医師がメインでする、のですが)です。
京都第一赤十字病院で研修していたころも、「脱腸」か、「虫垂炎」の患者さんは、研修医が外科研修の最後の方ですることになっていました。 患者さんも断る事も出来ますが、出来映えは「脱腸」に関しては、上手な外科医と一緒にすれば、上手な外科医と同じ仕上がりになるでしょう。 それくらい「入門の手術」です。
しかし、一旦、腸が出て、お腹の中に戻らなくなって腹痛を起こしてしまった場合は、研修医に手術は無理です。 腸を切り取ることもあるので。 人間100歳の時代に、80歳代で元気な方には私は「脱腸」の手術はどうしたらいい? と聴かれたら、「気になるでしょう? した方がいいですよ」と言っています。 しかし患者さんが「手術!」と聞いて、怖がったりするなら話はもちろん別ですが、必ず優れた外科医の話も聴いてもらうように促します。 それで手術を選択しないなら、それも「アリ」だと思います。
しかし、そうではなく、医師の話の持っていき方で180度変わる場合もあります。 「もうお年だから、手術は危険だし、しなくてもいいでしょう」という医師もいるでしょうし、いても良いとは思います。 しかしそうなると、その患者さんは一生「脱腸」の手術はうけないでしょう。 「やめた方がいい」、「危険」と言われたら絶対にしない、当たり前ですよね。 以上が私が自分や自分の家族を任せられる非常に優秀な外科医との話の内容です(優秀な外科医は「するべき」との意見でした) もちろん手術である以上、リスクはあるのですが、そのリスクよりもベネフィット(得られる良いこと)が上回っているのです。

、、、いつ来るか分からない腹痛(かなり危険な状態のことが多いです)がきて、緊急の手術(これが危ない手術となりますが、しなくてはいけません。 症状が旅先でなったらどうするのでしょう?)。 あと20年弱、ひょっとしたら30年40年生活していく上で、医師の話し方一つで、その患者さんの一生が変わってしまうのです。 自分が手術するわけではないので、手術が上手な医者に紹介するのが私は一番いい方法だと思っていますが、自分が手術しないのに、「一大事になる危険度はCT検査では低そうだから、しないでいいです」は、患者さんの選択肢を奪ってしまう、超悪手で、将棋の藤井7段も困惑するのではないでしょうか? 医療は確率論です。 それに加えて想像力も必要です。 専門でない、手術をしない医師は、自分の知識不足を受け止めて、決めつけ、押し付けではなく、紹介するべきではないでしょうか?

症状が今なくても、将来のことを考えて、私自身は患者様に話をしていきたいと思っています。